ABW導入で、オフィスはどう変わった? “渋谷の一等地”に入居、エヌエヌ生命の本社:移転準備に3年半(1/3 ページ)
エヌエヌ生命は5月、渋谷スクランブルスクエアに本社を移転した。移転に先んじて、役割等級制度を軸とした新人事制度の導入をはじめ、いくつかの制度を導入した。同社の働き方と新オフィスを紹介する。
本記事は『人事実務』(2020年10月号)連載「働き方改革の現場から 第36回 エヌエヌ生命」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。
エヌエヌ生命は、オランダに本社をもつ保険・金融サービスNNグループの日本法人で、日本では30年以上にわたり中小企業に特化した法人向け保険商品やサービスを提供している。
2020年5月、同社は渋谷スクランブルスクエアへ本社移転を行った。また、移転に先んじて2020年4月、役割等級制度を軸とした新人事制度の導入をはじめ、いくつかの制度を導入した。
今回は、このエヌエヌ生命の働き方と新オフィスについて紹介する。
「大切なもの」を守る
2020年の4月の制度変更の土台となっている人事の方針について確認していこう。
人事部長の小川靖子さんは「個々の人事施策はあくまでもドット(点)でしかありません。その背後にあるWhyがとても重要です」と話す。
エヌエヌ生命は「あなたの“大切なもの”を共に守ります」という存在意義(パーパス)を掲げており、それは社員に対しても同様である。社員がそれぞれ持つ大切なものを守るためは、制度には柔軟性・適応性を持たせるという考えだ。そのうえで、人材を引き付け、定着させ、育成するためさまざまな取り組みを行っている。
ABWを導入した渋谷の新オフィス
同社は2020年5月に、渋谷スクランブルスクエアに本社を移転した。最新の設備を備えた新しいビルの2.5フロア、計2223坪という広さになる。移転には、設備の刷新やセキュリティ向上、BCP機能向上などビジネス上の必要性に加えて、フレキシビリティの向上、アジャイルワークへの適応、社員エンゲージメントの向上など、働き方の面でもさまざまな狙いがあった。IT企業が多く集まる渋谷という立地にも、ITを強みとする生命保険会社への変革の意欲が込められている。
フロアにはABW(Activity Based Workplace)を取り入れた。席の区分は大きく「フォーカス」「セミフォーカス」「ソロワーク」「コワーキング」「ミーティング」「ワイガヤ」「カフェ」の7つ。固定席を廃し、仕事の内容に応じて最適な席を各自で選んでいく。社長や役員にもこのABWは適用され、個室・固定席はなく自主的に働く場所を選んでいる。
フロアの中央部にミーティング用の個室やチーム作業用の席を集め、フロアの外周に集中作業用の席が配置されている。席の準備率は約80%に設定。さらに1人あたりの使用面積を3.3平方メートルから5平方メートルに拡大して、快適さを向上させている。
偶発的に社員同士の接点が生まれる仕組みも各所にある。展望のよいカフェは、仕事場所や、同社の顧客でもある中小企業経営者やその後継者とのコラボレーションスペースとしての機能も持っている。また、「スクランブルジャム」と名付けられた区画は、最大100人程度が社内セミナー等利用できる規模だが壁はなく、フロアの動線上に配置されている。参加者以外にも話されている内容が把握でき、飛び入り参加や声掛けもしやすい。また、家具も移動式のものを採用しており、柔軟に変更ができるようになっている。
3年半をかけた移転準備
移転プロジェクトのスタートは2016年12月。約3年半をかけて行われた。
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