ABW導入で、オフィスはどう変わった? “渋谷の一等地”に入居、エヌエヌ生命の本社:移転準備に3年半(2/3 ページ)
エヌエヌ生命は5月、渋谷スクランブルスクエアに本社を移転した。移転に先んじて、役割等級制度を軸とした新人事制度の導入をはじめ、いくつかの制度を導入した。同社の働き方と新オフィスを紹介する。
ABWという場所に縛られない働き方や、それに伴うマネジメントはいきなり切り替えられるものではないため、事前に研修や説明会を繰り返して行った。また移転に先立って、赤坂の旧オフィス内にABWオフィスを設けて、実際にABWを試してみる場も作った。ここで新しい働き方や家具を体験してもらい、「やってみればできる」という実感を持ってもらったり、課題の抽出や修正を行った。
「新型コロナウイルスの感染拡大などの想定外もありましたが、準備を進めていたこともあって在宅勤務への移行はスムーズでした。緊急事態宣言中の4〜5月の在宅勤務率は94%を達成しています。緊急事態宣言の解除後も、配置に柔軟性を持たせたためソーシャルディスタンスの管理もしやすく、新しいビルは換気設備もしっかりしていることも社内からは好評でした」と小川さんは言う。
より公平な人事制度へ
続いて、人事制度についてみていこう。人事制度を刷新し、ジョブポジションをベースとする役割等級制度を導入した。これまでは、パフォーマンスに応じた上長からの評価が軸となっていた。この評価軸は新人事制度でも残るが、新しく、会社が事業目標を達成するために各ポジションに期待している内容を明確化し、その達成を評価にすることにした。
小川さんは「役割等級制度といってもさまざまな形があると思います。これまでの人事制度で一番不満としてあげられていたのが、公平ではないということです。等級が人についてしまいがちだったのです。しかし公平とは何でしょうか。誰でも人間ですから、自分が評価されていれば公平と思うものです。そこで、会社として公平の定義を『より客観的な視点を入れる』と定めました」と制度改革の狙いを説明する。
会社がまず事業目標達成のための「ポジション」を設定し、そして各ポジションに何を求めるかをそれぞれ設定していく。コンサルティング会社の支援のもと、ポジションごとにその内容を4つの要素と10の評価軸に整理した。その各評価軸でのスコアを点数化し、それを合計したトータルスコアの値によって、個々人のグレードが決定される。一定以上のグレードが管理職となるが、このグレードはあくまでも給与レンジのみにひも付いており、タイトル(肩書)とは別物になる。部長以上は等級とタイトルがひも付くが、それ以下でのタイトルは柔軟に決めてよいという運用になった。
「時々、スコアはどうやってつけているのか、自分は納得していないと言われることもありますが、これは会社がどう考えているかを明確にしたものです。自分はこんな仕事もやっている、というのはその個人のパフォーマンスとして評価する部分になります」(小川さん)パフォーマンス評価は賞与にかかわり、グレードに応じた給与とあわせて報酬総額が決まる。
役割等級制度の導入に合わせて、役職定年制も廃止された。「年齢だけを基準に役割の大きさを決めるのはやめようということになりました。年齢が何歳であっても、その人がついているポジションが大きければ相応の等級になります」役職定年制の廃止によって再び管理職となった人も複数いるそうだ。
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