デジタル通貨実現への道 日銀キーマンが語るCBDCの今(1/3 ページ)
日銀は10月9日にCBDCへの取組方針を公表。2021年にも実証実験を行い、その後のパイロット実験も視野に入れる。日銀がCBDCに取り組む狙いと、スケジュール感はどのようなものなのか。
法定通貨を紙に代わってデジタルで発行するデジタル通貨、いわゆるCBDCが実現に向かって動き始めている。中国はすでにパイロット実験を行い、欧州中央銀行や米FRBも態度を前向きに変えてきた。
日銀は10月9日にCBDCへの取組方針を公表。2021年にも実証実験を行い、その後のパイロット実験も視野に入れる。日銀がCBDCに取り組む狙いと、スケジュール感はどのようなものなのか。
Fintech協会が11月18日に行ったイベント「FINTECH JAPAN 2020」のセッション「マネーの未来とCBDC」から。
なぜ今、CBDCが必要なのか?
日銀の取り組みと考え方について語ったのは、日本銀行Fintechセンター長の副島豊氏だ。日銀のスタンスは、CBDCを推進するというよりも、いざ必要となったときに備えて議論をしておくべきだというもの。副島氏は、CBDCの必要性について、3つの点を挙げた。
1つ目は、現金がうまく流通しなくなってしまった場合だ。キャッシュレス化を進めてきたスウェーデンでは、現金お断りの店も増え、現金が利用できないことが逆に社会問題になっている。スウェーデン中銀は、これに対してCBDCの発行を検討。実証実験を行っている。
「現金がスウェーデンのようにあまり流通しなくなってしまい、しかもそれを民間のマネーでは解決できないようになったら、CBDCを出す価値がある。ただし、すぐ起こることは考えにくい」(副島氏)
2つ目は新興決済事業者などのサポートだ。現在PayPayなどのスマホ決済を導入すると、お客が支払いを済ませてから店舗側に入金するまでに、数日から1カ月程度のタイムラグがある。これは、裏側で決済事業者が銀行間送金を使って処理しており、頻繁に処理を行うと送金手数料がかさむ問題があるからだ。
「日銀券(お札)のように、単一の債務を出すことがソリューションになる。ただし全銀システムのような仕組みでもインターオペラビリティ(相互互換性)のなさは解決できる」(副島氏)
マネーとは、発行機関の債務だと位置づけられる。銀行の財務諸表を見れば分かるように、預金というのは銀行にとっての債務だ。同じ銀行の中で資金を移動するのは、この債務残高を付け替えることで行われる。異なる銀行の間では債務の付け替えができないので、各銀行は日銀に口座を持ち、日銀の銀行に対する債務を付け替えることで資金を移動する。このように、単一の債務ならば資金の移動が容易になる。CBDCは日銀の債務となるため、利用者全員がCBDCを持つことで、資金移動が簡単になる。
3つ目が、単にお金を払う、資金を移動するというだけでなく、ほかの機能を付け加えられる可能性だ。マネーとしてだけでなく情報のビークルとしての機能、いわゆるプログラマブルマネーを指す。
大手企業の間では、受発注や納品の際に、紙の帳票や請求書を使わず電子的にやりとりするシステムであるEDIが普及している。銀行間の送金を行う全銀ネットでも、EDIの情報を取り込んで、金額の送金情報だけでなく商取引情報を付与できるような仕組みが存在している。
「入金記録を見て5000円の入金がたくさんあったときに、どこからの入金なのかを照らし合わせなくてはならない。同じ企業、同じ人からの取引がたくさんあったときは、すごくたいへん。これを便利にするということだけでも意味がある。情報とマネーが一体運用される仕組みができていく。そんなイメージだ」と、副島氏はマネーへの機能追加の例を話した。
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