国産ジェット、EV、ドローン……この国のモノ作りを敗退させた「日本スゴイ」の病理:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
三菱重工の「初の国産ジェット」事業が凍結。EV、ドローンなど新技術で連敗する日本企業。その背景にある病理とは。
初の国産ジェット「三菱スペースジェット」の事業凍結、日本が得意だったはずの電池技術でテスラの後塵を拝するEV(電気自動車)関連業界、中国企業との技術格差が拡大するばかりのドローン(無人機)など、日本のモノ作りが次々とダメになっている。一連の凋落(ちょうらく)の背景には何があるのだろうか。
重要技術で日本連敗
三菱重工は10月30日、1兆円以上の費用を投じて開発を進めてきた、国産初の民間ジェット旅客機「三菱スペースジェット」の開発を事実上凍結する方針を明らかにした。三菱スペースジェットは開発が遅れに遅れ、6度も納入を延期してきたが、現時点においても納入できる見通しは立っていない。同社ははっきりと説明していないが、事実上の撤退と考えて良いだろう。
航空機の製造はかつては米欧企業の独壇場だったが、近年はブラジルや中国など新興国のシェアが高まっている。三菱がなかなか撤退に踏み切れなかったのは、同社が撤退すれば「日本は飛行機を造れない」国であると公言することになってしまうことを危惧したからとされるが、結局はそうなってしまった。
EVやドローンの分野も似たような状況となっている。
日本は電池の分野で断トツの技術を持っているとされ、自動車のEV化が進めば日本メーカーは躍進するといわれていた。ところが現実にEVのバッテリーにおいて世界をリードしたのは、電池に関する技術をほとんど持たなかったベンチャー企業のテスラだった。その後、中国企業が猛烈な勢いで技術開発を行い、現在では車載用電池の分野では中国メーカーの独壇場となっている。
ドローンもまったく同じである。日本はドローンの分野では突出した技術力があり、日本企業が圧勝するとの声が多かった。ところが現実はまったく逆で、市場は中国企業が圧倒的なシェアを占めている。しかも中国メーカーのドローンは価格が安いだけでなく高性能であり、日本勢は手も足も出ない状況だ。
多くの人は「モノ作り大国日本に何が起こっているのか」と驚いているが、一連の出来事には全て共通点がある。それはソフトウェアもしくはソフト的な知見の軽視である。状況をよく知る専門家の間では、この問題は以前から指摘されており、これらは全て予想通りの結果に過ぎないのだ。
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