コロナ禍で服の“クリーニング離れ”が深刻化 成熟市場でも消費者の心をつかむために必要な3つの視点とは:復活のシナリオは(5/5 ページ)
全国的にクリーニング屋さんの店舗数だけでなく、消費者の支出も減っている。コロナ禍でますますクリーニングの需要が落ち込んでいる。成熟市場で再度成長するために必要なこととは?
客関連で新規サービスを考えることができるか
同社は、クリーニング業が投資回収までに時間のかかるビジネスであることを前提に、並行して単価が高く利益をつくりやすい事業を立ち上げています。布団をクリーニングする「ふとんリネット」、靴を洗える「くつリネット」、クリーニング付き保管サービス「リネット PREMIUM CLOAK」など、衣類のクリーニング以外にもサービスを展開しています。前述したようなクリーニングそのものの価値を高められるようなサービスをすでに開始しているのです。
このような考え方を私どもでは「客関連マーケティング」と呼んでいます。
既存事業に新たに付加する商品やサービスを考える際には2つのアプローチがあります。それは「客関連」と「商品関連」です。
クリーニングのような業界では商品関連で考えていくと、どうしても法人需要をとりに行くといったことになりがちです。それも一つの策ですが、クリーニング事業の本質からずれていきます。
お客さんが本当に求めているサービスをこの業界ではまだ提供できていないのではないか。そこを改善し、満足してもらえるようなサービスを考えることが客関連マーケティングです。ですからホワイトプラス社のように、あくまでもクリーニングの本質に焦点を当てることが必要なのです。
クリーニング市場は歴史が長く、市場も縮小しており、なかなか変化を起こしづらいように見えます。しかし見方を変えると、既存のプレイヤーでは変革できない市場ということは、業界外の人にはチャンスのある市場だということです。このような成熟市場が日本にはまだまだあります。
いかに常識にとらわれず、そこに変革を起こせるか。
市場が成熟するというのは既存事業者の先入観であって、異業種や新規参入者にとっては成熟という概念はありません。柔軟な発想であらゆる市場を見ていくことがこれからの経営においては欠かせないことだと思います。クリーニング市場からこれからの経営の本質を学んでいただければ幸いです。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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