総務は“発注のプロ” コロナショックで取捨選択すべき、予算配分・お付き合い業者「7つの手順」:総務プロの「攻めと守り」(2/2 ページ)
総務部は、オフィス関連のサービスを外部の業者に“発注”する立場でもある。今回のコロナ渦では、現在の発注先が本当に必要なサービスなのか、新たに何が必要なのかを取捨選択する必要がある。
「総務予算の配分組み替え&お付き合い業者の取捨選択」の変革ロジック
<1> まずは経営方針(変革)を理解する(ここで、社内での情報共有に“壁”があるのは絶対NG)
<2> その方向性に沿った社員の働き方、総務戦略とサービス計画を立てる(向こう3年〜5年で十分)
<3> 計画に合わせ「やめる」べき(1)〜(9)の予算カットを編成する(まずは2021年について)
<4> 計画に合わせ「追加」すべき(1)〜(9)の予算組みを「攻め」の姿勢で編成する
<5> <4>の中身がもし「人事部」や「テクノロジー部門」の予算ならスワップを提案する
<6> 人事部、テクノロジー部門と連携して、<5>の予算スワップを経営(COOレベル)へ提言する
<7> トータル予算ベースラインは「5年PL換算」でマイナスとなるよう提案をまとめる(ここは「守り」の部分、第3回の記事を参照)
この<1>〜<7>のような根本的なプロセスを経ずに、表面的に他社の事例(オフィス改革、在宅ワーク推進、賃貸借契約の組み直し、オフィス移転など)をまね事で実践しても、うまくいかないでしょう。一時的に経営の数字は良くなる可能性は高いですが、社員が最大の被害者となり、中長期では悪影響をもたらすことになります。
今、総務部はそのような会社の過渡期(このような変革は70年に1回、と第1回で解説しました)にいることを認識して、責任感もって実行し、会社の経営に影響力を出すときなのです。失敗ももちろんあり得ますが、少なくとも責任を持ち、上記の変革ロジックに従って社内で同意を得ながら推進していれば、経営は失敗を受け入れ、サポート&フォローしてくれるはずです(失敗を恐れない総務部!)。
例えば、<3>のフェーズで社員の働き方をペルソナレベルで分析した結果、全体的な方向性が見えてきて、本社オフィス=50%、在宅=30%、その他シェアオフィスなど=20%──とすることもあり得ます。これは「オフィス面積を50%削減できること」を意味しますが、コスト削減分を<4>、<5>にいかに円滑にスワップできるかどうか、コスト削減を経営の数字をよく見せるだけの「一時的な数字づくり」に終始しないようにすることが、今後の企業競争力の肝となりそうです。
特に<5>では昨今、急加速している業務支援系のプラットフォームやテクノロジーに対して、総務部のリテラシーが低いようであっては、可能性をつぶしてしまいます。これを防ぐ意味で、2020〜22年の間に「テクノロジーが必要な予算は総務部が作り出す」という流れが急加速すると、私は予測します。
企業経営の中ではバックオフィス内のコストスワップ(間接経費の一部組み替え)にすぎませんが、総務部とテクノロジー部門がそのような経営視点に立って切磋琢磨しながら、同じ方向へ向かうことが実務では必要になってきます。これができない組織、つまり“組織の壁”が大きい企業では改革が遅れます(大企業病といわれるかもしれません)。
第5回では「総務部とテクノロジー部門の連携」をテーマに、この難局をいかに協力し合っていくのか、また具体的に今一番活用できる最新テクノロジーやサービスなどの例をIT業界が提供するサービスMAPをベースに、その選択肢を考えてみたいと思います。有事だからこそできることがたくさんあります。
第6回では「総務部と人事サービス部門の連携」をテーマとし、その効果が社員のワークライフ、人生観にまで影響を与える施策を探っていきたいと思います。
著者紹介:金英範
株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。
インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。
JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。
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