アイデア募集したら不正告発! 「政商」群がる? デジタル庁は大丈夫か:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「デジタル改革アイデアボックス」をご存じだろうか。菅総理肝いりで進めているデジタル庁の創設に向けて、みなさんからアイデアを募集しているが、そこに「内部告発」が届いたのだ。「デジタル庁は大丈夫なの?」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。
「徹底的な透明性」を重視
10月末、セキュリティカンファレンス「CODE BLUE 2020」の中で、タン氏が特別講演を行った。聴講者からデジタルイノベーションを成功させた要因は何かと問われると、集合知に基づく迅速な対応として「Fast」を挙げた。では「集合知」とは何かというと、タン氏はこのように述べている。
「完全に開かれた自由な社会では、表現の自由が集合知となる」
つまり、開かれた自由な社会で表現されたことに基づいて、迅速に対応できなければ、デジタルイノベーションなんざ夢のまた夢だと言っているのに、等しいのである。そして、デジタル政策に限らず、政府というのは、国民の自由な発言を科学的理解に基づき判断し、知見に変えて、透明性をもって対応することが、あるべき姿だと断言したのである。
実際、日本でタン氏は「ITの天才」として有名だが、実は誰よりも「Radical Transparency」(徹底的な透明性)を重視している人物だということはあまり知られていない。
毎日のスケジュールや、会議での発言、さらにはどのような訪問者が来て、どのような会話をしたのかをフルオープンにしてサイトにアップされる。メディアのインタビューを受けても同様で、その内容は広く公開されている。
これは日本の政治家によくある、「YouTubeチャンネルはじめました」とか「Facebookでどんどん発信します」みたいな上っ面のパフォーマンスなどではなく、もともと政府とはそうあるべきという政治信条の人なのだ。
台湾には、政府に情報公開や透明性を求めるコミュニティーを持つ「g0v(ガブゼロ)」という民営の政治サイトがあるのだが、何を隠そう、タン氏はこのサイトの創設メンバーの1人なのだ。つまり、台湾がデジタルイノベーションを成功させたのは、タン氏が天才だなんだということもさることながら、このような「徹底的な透明性」というブレない姿勢が、改革に対する国民の理解につながり、支持を集めたことも大きいのである。
ここまで言えば、筆者が何を言わんとしているのか分かっていただけただろうか。デジタル改革のアイデアを募った内閣官房主催のサイトに、「政商」の不正や癒着を告発する書き込みがあったのだ。それが事実かどうかはさておき、タン氏ならばスルーはしないだろう。
即座に、検討会のメンバーを全て公開して、事実と違うならば訂正する。大手ベンダーの人がごっそりいるのなら、彼らがいる理由をちゃんと説明して、投稿主が懸念するような事態は起こらないと国民に説明する。そして、もし指摘通りの問題があるのなら、検討会の人選や、創設準備のプロセスに問題があるということなのだから、迅速に対応して問題を解決していくしかない。
それがタン氏の言っている、デジタルイノベーションに不可欠な「Fast」だ。完全に開かれた自由な社会における、表現の自由でもたらされる「集合知」に迅速に対応することで、デジタルイノベーションがもたらされるのだ。
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