ミシュランの星を獲得したタイの「屋台めし」 70代女性シェフが究極の「顧客体験」を提供できている理由:食の流行をたどる(2/5 ページ)
タイのストリートフード(屋台めし)がミシュランの星を獲得した。筆者は2019年、店舗を実際に訪れたことがある。感動のあまり涙を流してしまった「カスタマーエクスペリエンス」とは。
ミシュラン一つ星のストリートフード
ジェイ・ファイは、Netflix (ネットフリックス)の人気番組『ストリート・グルメを求めて』でも取り上げられた。「屋台めし」とも呼べる存在で、ローカルフードとしてミシュラン一つ星を獲得したレストランだ。
バンコクでは屋台が軒を連ねており、独自の食文化を形成している。スマートフォンが普及し、新しい文化や習慣が国外から入ってくる中、屋台は地域の人々を結び付ける大切なコミュニケーションの場でもあるのだ。
一方、道路に屋台を出しているため、街の美化や交通渋滞の緩和など観点から、政府の取り締まりが強化されてきた。だが、ジェイ・ファイがミシュランに認められたことで屋台の価値は見直された。
ジェイ・ファイは、タイの3大寺院がある旧市街地の近くにある。観光客が頻繁に通るような好立地ではない。わざわざ足を運ばなければならない場所に存在するのだ。
ミシュランの星を獲得した店と聞くと、ホテルに入っているような高級レストランを想像しがちだが、ジェイ・ファイはどこにでもあるような庶民的なローカル食堂だ。ただ、値段はその街の相場と一桁異なる。通常、一食分は300〜500円程度だが、平均的な客単価は4000〜5000円程度である。
このお店で、ゴーグルを着用し、フライパンを振り続ける女性シェフがジェイ・ファイだ。年齢は70代だが、力強い腕さばきをみているととてもそのような年齢には見えない。「ゴーグルおばさん」という異名も持つ。世界一有名なストリートフードのシェフであろう。
同店の料理は全て彼女がつくっている。新鮮な素材を、化学調味料を一切使わず、おいしい料理に仕立てる。ここでしか食べられない料理の数々は、世界中のフーディー(食通)を魅了している。そして、このお店が繁盛することで、街の活性化につながっている。
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