福袋は「企業泣かせ」? 意外な成り立ちと工夫を凝らしたコロナ禍の戦略:福袋購入歴40年のベテランが分析(2/4 ページ)
新型コロナウイルス感染拡大の中、例年とは違う動きを見せる「福袋商戦」。福袋を40年以上買い続けてきた筆者のMOMOTA氏はこう分析する。
食料品の福袋は利益が出ない?
なぜ福袋の利益が薄いのか。先ほども述べましたが「セール品+ノベルティ」のパターンが確立されているからです。
ある百貨店の担当者は、中でも食料品の福袋が一番利益が薄いと話していました。衣服などの福袋は、通常「福袋用の商品」を新しく製作し販売します。この工程が最も手間も労力もかかる部分です。しかし定価が存在しないため「7万円相当が1万円」などという形で販売することができます。一方、食料品やコスメ商品、家電商品などは、福袋のために新しい商品を作ることはありません。そのため無理にでも値段を下げて「お得感」を演出するしかないのです。
よく福袋を購入して「失敗した」などと耳にすることがありますが、それは個人の価値観によって左右されるファッション系に多いようです。
商品を売るきっかけ作りと日本独自の商戦
近年、福袋シーズン手前に台頭してきたのが「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」です。年末には、海外からの輸入イベントであるハロウィーンや11月11日の独身の日、ブラックフライデー、クリスマスなどとイベントが集中し、その後に福袋がやってきます。
福袋の販売は毎年、通販の早いところでは9月に始まり、10月に入って百貨店通販が参入して始動します。百貨店が扱うブランド店舗での福袋は、例年だと12月頃から店舗での予約の受付が始まり、お正月は福袋を受け取りにいくという流れです。
福袋は、年末から新年にかけての“最後であり最初”のイベントで、しかも、日本独自の大イベントである為に、売り手も買い手も縁起物として盛り上がります。
コロナの影響を受けた21年新春福袋の動向
年が明けてすぐの頃から新型コロナウイルスの話題がSNS上で騒がれていて、私も動向を注視していました。なぜならば、福袋は年末年始だけではなくキッズやコスメの「夏の福袋」も存在するからです。特にファッション系の福袋などは、中国などで専用の商品を製作するブランドが多く、その影響を心配したのです。
夏の福袋は年末に比べて出品数も少ないのですが、やはり影響は出ていました。夏の福袋を毎年出しているブランドが今回は出品していないという状況が散見されました。
通常、百貨店などは年始に販売する福袋の企画を夏頃には開始し、年末に向けて準備を進めていきます。しかし今回は皆さんもお察しの通り、非常事態宣言やリモートワークの導入で企業にはマンパワーも無く、肝心の既存商品も売れない状況が続きました。
アパレル業界では、レナウンの倒産というニュースがありました。このような状況下で、アパレル業界や旅行業界は大打撃を受け企業は弱体化。毎年福袋の準備に追われている時期に、ファッションブランドは制作費をかける余地が無く、「利益の上がらない福袋」から撤退、あるいはブランド数を減らさざるを得ない状況となったのです。
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