安易な「Go To イート」批判に喝! “功罪”を検証して見えてきたものは:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
「Go To イート」には批判も多い。しかし、実態とは違うイメージで語られていないだろうか。キャンペーンの功罪を検証する。
分かりにくい点も多かった
こうして見ていくと「Go To イート」にはプラス面も多かった。しかし、「グルメサイトごと」「都道府県ごと」にバラバラで、消費者からするとどうすれば使えるのか、分かりにくい点も多かった。
プレミアム付食事券でも、京都府など12府県で発券を請け負う「ファミリーマート」において、プリンタの用紙切れが相次いだ。そして、苦情が殺到してしまい、お粗末な印象は拭えなかった。
こういった事態になったことを、農水省はどう考えているのか。担当者は「『Go To キャンペーン』の4つの事業(トラベル、イート、商店街、イベント)は、もともと経済産業省が企画したものだ。ところが、持続化給付金の民間委託問題で、突然『Go To イート』が振り分けられてきた」と説明する。そもそも、当事業を担当することが晴天の霹靂(へきれき)だったと振り返る。要は「経産省と電通・パソナとの癒着が……」という話になるので、急きょ農水省に無茶振りしてきたというのだ。そうした中で、農水省ではどうすれば迅速に実行できるのか、連日のように深夜まで協議を重ねた。その結果、10月から始めることができたという。
ポイント付与に関しては、各グルメサイトにもともとあったポイント付与の仕組みに乗るのが最善。1からシステムをつくったり、グルメサイト間で調整したりしていたら、1年経ってもできない。そこで、スピードを重視したとのことだ。
農水省の反省
「システムの設計が甘かったことは反省している。しかし、ポイント付与でスピーディーに需要を喚起し、プレミアム付商品券につなげられたのは、良かったのではないか」(農水省の担当者)。このように、プレミアム付商品券は、需要喚起後の景気の持続が目的だったことが示唆された。
「Go To イート」においては、国民が低投資で飲食店や生産者を救うことが可能となる。また、さまざまなレストランの取り組みを知ることができるメリットもある。
ところが、そういった実態とはかけ離れたイメージで語られることが増えてしまった。その理由は、官邸や農水省の説明不足、システムの不備を突くような錬金術を自慢するSNSの投稿、経済優先の姿勢が気に入らない人たちの声、過度に新型コロナウイルスを恐れる自粛警察の存在、医療崩壊の危機をエビデンスなしに「Go To キャンペーン」のせいにする識者たちの批判などだろう。
現実に新型コロナの影響で、13の都道府県でプレミアム付商品券の新規発行が中止されているが、本当に必要な措置といえるのか。実際の経済効果や感染症との関係を冷静に分析し、対処する必要があるのではないか。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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