YouTubeが落ちた日、ユーザーはどこに行った? データで解析:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
世界から突然YouTubeが消えたとき、人々はどこに居場所を求めるのだろうか。圧倒的なシェアを誇るYouTubeがなくなったとき、ユーザーはインターネットのどこに居場所を求めたのだろうか。今回はGoogle Trendsデータインターネットユーザーの動向を日米で比較した。
YouTubeの次にニコニコが選ばれた理由
まずは、動画配信サービス市場における「需要の代替性」が日本市場については高く、米国市場においては低いということがあるだろう。
NTTドコモ系列のシンクタンクであるモバイル社会研究所の調査によれば、我が国における動画サイトにおいて、YouTubeが62.3%、ニコニコ動画が9.1%という結果となった。
YouTubeの利用度と比較すると、ニコニコ動画はその15%程度の利用度であるが、主にサブカルチャー主体のコンテンツを得意としていたり、動画のコメントを画面上に表示していたりするという独自性によって、競争の激しい動画サイト市場で生き残っている。その結果、日本では決して無視できない量のアクセス数があるため、YouTubeでアップロードしている動画をニコニコ動画にも並行してアップロードすることで知名度を向上させようとする動画投稿者も存在する。
今回、トラフィックが大幅に向上した背景には、これらの要因がニコニコ動画のYouTubeに対する「需要の代替性」を高めたことによると考えられる。
そもそも、需要の代替性とは、商品の機能・用途・品質等の要素に基づき、需要者側から確定する異なる商品間の代替度をいう。商品間の代替度が高いほど、競争関係が強くなる。
この観点から考えると、ニコニコ動画は、YouTubeと同じ動画がアップロードされやすい環境にあり、YouTubeが不調のときにはニコニコ動画にアップロードされている動画が補完的な立ち位置となりやすい。
その結果、ユーザーの認識としては「YouTubeがなくなったらニコニコ」という動きとなったと推測される。一方で米国ではYouTubeが“国産”動画サイトであることもあり、独占的な立ち位置を確保していることで2番手、3番手の「補完性」が高まらず、結果としてYouTubeの代替となりにくかったのではないだろうか。
もう1つの要素が時差にあるだろう。日本時間では午後8時45分というゴールデンタイム中に障害が発生したが、米国西部における太平洋標準時では午前3時45分と早朝であった。ニューヨーク時間でもその時刻は朝6時45分と、米国ではインターネットユーザーが多くない時間帯であったことも両国における影響度に差が生まれたことは留意しておくべきだ。
今回はYouTubeを中心に障害発生時のユーザー動向を確認したが、1つのプラットフォームの稼働中断ないしは停止がもたらす影響は年々大きくなっている。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手
掛けている。
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