テレワークで若手は「生産性上がるも苦痛」な真の理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
テレワークでは若手と中高年に働き方の顕著な差が。若手の方が生産性が上がりやすい。一方でストレスは増す傾向、なぜ?
中高年がストレス感じない理由
実はこの話は若手のストレスの調査にもあてはまる。25歳以下はいわゆる新人なので、そもそも会社組織に慣れていない。組織内で生じるストレスフルな状況に対処するスキルはまだ獲得できていないだろう。テレワークが中心になると、直接的なコミュニケーションは減るので、どうしても不安要因が大きくなる。これはITスキルとはまた別の話なので、デジタルネイティブ世代だからといって解決できるものではない。
一方、中高年社員は社歴が長いので、これまでの経験から、ストレスへの対処方法を身につけている。仮にその原因が不得意なITであったとしても、若者が新しい組織に入ることと比較すれば、それほど大きなものではない。
一連の結果は、若手にストレス対処能力がないということよりも、中堅以上の社員がテレワーク環境において若手をフォローするスキルを身につけてないと考えた方が適切だろう。対面が中心の時代であれば、上司は若手の顔色を見ながら適宜フォローしていたはずだが、テレワーク時代にはそうはいかない。ITツールを介したコミュニケーションになるので、ここでうまく本人に寄り添うには、これまでとは違うスキルが求められる。
いつの時代もそうだが、新しいコミュニケーション・ツールが登場した時には、そのツールに合ったコミュニケーションのあり方にシフトしなければならない。手紙が中心の時代と電話が中心の時代では、当然、接し方も違っていたはずだ。
コロナ終息後も、完全に元の状態に戻る可能性は低く、テレワークが拡大することはあっても縮小することはないだろう。そうであるならば、これからの時代は、テレワークに適合したコミュニケーションのあり方こそが、組織におけるスタンダートとなるべきだ。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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