アパレル“総崩れ”はコロナのせい? 復活に必要な6つの「シフト」:カジュアル化の流れ(4/5 ページ)
コロナ禍でアパレル業界が窮地に陥っている。しかし、根本的な変革が求められていたと筆者は主張する。業界の“悪弊”を抜け出すために必要な戦略とは。
消費者のスペンドシフト
こうした大きな変化の背景には何があるのでしょうか。消費するモノや消費の仕方、つまりお金の使い方が変わってきたこと(スペンドシフト)に原因があると私は考えています。
アパレル業界を縮小させた根本原因は、「環境意識の高まりによるファッションスタイルの変化で強まったスペンドシフトに対応できなかった企業戦略の失敗」というのが私の分析です。
特に「仕事で着るための服、お出かけで着るための服」が必要なくなり、普段着=仕事着=お出かけ着というオールカジュアル化が進行した影響が大きいのです。
そのきっかけを作ったのは05年に提唱されたクールビズにあります。
もともとこの言葉は和製英語で、環境省が提唱する夏のビジネス用軽装の愛称でした。
そして、夏のファッションも見直そうということで「クールビズファッション」が登場しました。職場の冷房を28度に保った状態で、涼しく格好良く働ける服装を心掛けましょうと提唱されました。当時は「地球温暖化の影響もあり、夏の暑さが異常なので、少しは軽やかに仕事できるようにしよう」という軽い感じでスタートしました。まだ当時はネクタイをする人も多く、夏でもスーツというサラリーマンも目立っていました。
しかし、6年後に新たな宣言が出ました。スーパークールビズです。11年3月の東日本大震災によって「震災の影響で節電をしなければならないので、できる限りのことをやろう」と考える国民が増えました。そして、環境対応という強いメッセージが加わって、カジュアル化が一気に進んだのです。
05年にクールビズが発表された際、それまで苦境が続いていた百貨店業界の年間売上が9年ぶりにプラスへ転じました(前年比100.7%)。特に05年6〜7月は連続して売上がアップ。アイテム別に見ると衣料品関係が非常に好調でした。ワイシャツ、シャツ、カットソー、ジャケットがよく売れており、ネクタイ、スーツは売上が減少という傾向でした。紳士関係がけん引役となり、婦人関係の売上も引き上げたのです。しかし世帯ベースの実際の消費支出はどうだったでしょうか。
05年のアパレル消費支出比率は全体の4.7%、11年は4.3%と徐々に減少していったのです。瞬間的には売れていたように見えた数字も、実は局所的なものであり、市場全体にはプラスになっていなかったのです。
むしろTPOで洋服を着替えるというファッションスタイルは古くなり、仕事でも普段でも変わらぬスタイルでいるほうが「おしゃれ」になっていきました。
ジャケットやスーツ、シャツ、ネクタイ、革靴といったいわゆる通勤着需要はクールビズをきっかけに縮小しました。
そして、今回のコロナ禍をきっかけに男性、女性共に出勤機会が激減し、在宅勤務の普及による服装のさらなるカジュアル化によって、「オールカジュアル化がコンプリートしてしまった」のです。
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