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2020年最も読まれた記事池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

年内最終号は恒例の今年最も読まれた記事。ひとまずトップ5を並べてみよう。2位を除けば全部トヨタ絡みである。前代未聞のコロナ禍に見舞われた2020年は、自動車販売が壊滅的打撃を受けても全くおかしくない一年だったが、そうしたタイミングで、トヨタが10年以上をかけて進めてきたTNGA改革が花開き、自動車販売全体の落ち込みを救った年だったともいえる。

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 つまりTNGA以前のシャシー流用は、コストダウンのために部品を流用しようと考えていたにもかかわらず、カスタマイズで意外に高く付いた。それに対しあらかじめ「固定」する部分と「変動」する部分を分けて基礎シャシーを作るコモンアーキテクチャー方式によって、ローコストかつ高性能なものができるようになった。


2015年に発表したTNGAによる新プラットフォーム

 コストダウンの手段に過ぎなかった部品流用が、いつのまにか目的化しておかしなことになっていた点を反省したところからスタートし、本来製品の両輪たる「ローコスト」かつ「良品」、つまり「良品廉価」のために「もっといいクルマ」というテーマを加えて再定義し、どこを共通化してコストダウンするか、どこを専用設計にして商品価値を高めるかについて徹底的に突き詰めた成果である。

 後になってみれば、失敗の理由は割と簡単ということはよくある。いつの間にか「いいクルマ」を置き去りに、コスト=生産効率への比重が上がりすぎていたのである。そこへの猛烈な反省が形になり始めたのが2015年前後、以後5年間でTNGAはトヨタの商品群へ大きく広がり、それがたまたまコロナの時期に一斉に花開いたのである。

 そうした高レベルの戦いにおいて、今回読まれた記事の中で、1位になったヤリスクロスは、製品としても飛び抜けている。とにかく穴が無い。ベースになったヤリスとの比較においても、明らかにトータルバランスが優れていたのだ。

 逆にいえば、ヤリスクロスが控えていたからこそ、ヤリスを「運動性能と燃費に特化させる」ことができ、その対極としてヤリスクロスは、室内空間もラゲッジスペースも、操縦性も燃費も、全てを諦めずに高次元でバランスさせられたともいえる。そこには、こういう補完関係にある複数車種を1人のチーフエンジニアに任せるというトヨタの新しい取り組みもあったと思う。頭領が2人いれば手柄争いになるが、1人なら、冷静にそれぞれのポジショニングに商品を割り振れる。ヤリスとヤリスクロスだけでなく、ハリアーとRAV4とハイランダー(北米向け3列モデル)もまた1人のチーフエンジニアに任された。

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