ガソリン車禁止の真実(考察編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
「ファクト編」では、政府発表では、そもそも官邸や省庁は一度も「ガソリン車禁止」とは言っていないことを検証した。公的な発表が何もない。にも関わらず、あたかも30年にガソリン車が禁止になるかのような話が、あれだけ世間を賑わしたのはなぜか? それは経産省と環境省の一部が、意図的な観測気球を飛ばし、不勉強なメディアとEVを崇拝するEVファンが、世界の潮流だなんだと都合の良いように言説を振りまいたからだ。
EVはどんどん進化して性能でも価格でもガソリン車を抜いていけばいい。そうすればマーケットは自然にEV車を受け入れ、EVは普及して、政府がガソリン車を規制するまでもなく、世の中は全部EVになる。それだけのことだ。人より早く、EVが優れていると考えるようになるのは勝手だし、好きなものを自分の金で買えばいい。むしろ買って普及に貢献してほしい。
EV派の人がよく例に挙げる「ガラケーがスマホに駆逐された」話にしても、政府がスマホに補助金を出すまでもなく、企業の努力でマーケットの支持を自力で獲得したから主役が入れ替わったに過ぎない。現状EVがスマホのようになっていないのはEVメーカーの努力不足である。スマホ普及のためのガラケー禁止の議論などあっただろうか?
要するに、価格でも実用性能でも後れを取っている(と書かれると嫌ならば、マーケットにそう思われている)状態を逆転するのは極めてカンタンで、EVが誰の目にも明らかなように進化すればいいだけなのだ。それを棚に上げて、いまこの瞬間にマーケットに支持されているガソリン車やハイブリッドを禁止しようなどという言動を振りまくからおかしなことになる。
EVが進歩した暁には、自然にガソリン車が淘汰されることになるだろう。補助金や優遇税制みたいな下駄を全部脱いで、それでマーケットで勝つようになった時は、もうそれに抵抗しても仕方がないのだ。それがマーケットである。ただ、現在はまだマーケットはそう判断していない。日本の自動車メーカーはそう読んでいるから、今マーケットが支持する商品を作っているに過ぎない。
もちろん進化は必要だ。馬が交通の主力の時代にユーザーに欲しいものを聞けば「もっと速い馬」と言っただろうという話がある。自動車が欲しいなどと言うジャンプアップはマーケットからは出て来ない。しかしそこで自動車が誕生したのは市場経済のトライ&エラーのシステムがあったからだ。
何のエビデンスもないところで、馬しかないマーケットに、おそらくは変人扱いされながら自動車の可能性を信じてリリースして世に問うた結果、短期間で馬より便利だとマーケットに認められた。馬を禁じた結果自動車が主流になったわけではない。今のEVのようにテレビのコメンテーターですら解説を始めるような状況になってなお、マーケットを席巻できてない商品は、少なくとも現在においてはあまり革命的ではないのだ。
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