自販機1日の売り上げは1000円未満 ダイドーが“鬼滅缶”で増益を達成できた理由:ビジネスの構造(4/4 ページ)
鬼滅の刃とタイアップした缶コーヒーがヒットしたDyDo。発売から3週間で累計販売数が5000万本を突破。自販機ビジネスの収益モデルとは?
3週間で5000万本の記録的ヒット商品
前述したように、そもそも1日に8本売れるかどうかという「小さな商いを積み上げる」のが自販機ビジネスだ。ダイドーは、10月22日付のニュースリリースで、10月5日に発売した鬼滅の刃コラボ商品の累計販売本数が5000万本を突破したと発表している。年間販売数量が約10億本のダイドーにとって、これは記録的なヒットだ。
発売から約3週間で5000万本という数はどの程度のインパクトがあるのか。仮に、同社が保有する28万台だけで取り扱ったとすると、1台あたり1日で11本を超える計算になる(もちろん、実際には自販機だけで売ったわけではない)。
鬼滅の刃効果によって定価販売を維持し、値引きを回避するなどの効果があると、売り上げから原価を引いた売上総利益(いわゆる粗利)を高められる。コロナ禍の影響で業界全体が苦戦を強いられている中で、その影響を補ってあまりある“利益”をもたらしたのは明らかだろう。
コンビニエンスストアに売られている商品にとどまらず、鬼滅の刃は、幅広い分野でのタイアップが進んでいる。例えば、紳士服販売のはるやまホールディングスが、「パーフェクトスーツファクトリー」業態で、タイアップ製品を扱っている。紳士服はカジュアル衣料と異なり、もともと“数量”を売りにくい。そのうえ、在宅勤務が増加した影響で、需要が減少している。鬼滅の刃でどう販売数量が増えるかは要注目だ。
自販機のビジネスに限らず、もともと販売規模が小さいビジネスは、その規模に適応させた「筋肉質」というべき、徹底的にコストを削減した運営体制を構築しているものだ。そういうビジネスは、いったん大きな売り上げを取れる商材を得られると、利益を大きく伸ばしやすい。
著者プロフィール
小島一郎
株式会社分析広報研究所 チーフアナリスト・代表取締役
年間1000社の上場企業への継続的なリサーチ活動を行っているアナリスト。独自リサーチを基盤に、企業に対して広報や企業価値向上施策に関するコンサルティングを行っている。
1997年上智大学経済学部卒。入社した山一證券で山一証券経済研究所企業調査部に配属されるも破綻を経験。日本マイクロソフトを経て、大和総研企業調査部にて証券アナリストを行う。日経金融新聞(現日経ベリタス)、エコノミスト誌の人気アナリストランキングに名を連ねた。その後、事業会社に転身、上場物流不動産会社、上場ゲーム会社、上場ネットサービス会社で広報IRや経営企画に携わる。2012年独立。リサーチアナリストや事業会社での実務経験を活かして、企業価値向上を戦略面、広報実務面でサポートする株式分析広報研究所を設立し現在に至る。企業価値向上の実績を積み上げている。
アナリスト、コンサルタントとしてビジネス媒体中心に記事執筆。全国紙、地上波等でのコメント紹介多数。リサーチの現場からもつぶやいている。
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