なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。
2021年の日本経済の先行きを暗示しているようなニュースではないか。
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円、昨年は1億9320万円という感じで、驚くような最高値で落札をして世間をにぎわせてきた「すしざんまい」を運営する株式会社喜代村(東京都中央区)の木村清社長が、今年はこんなことをおっしゃって「自粛」したのだ。
「自粛ムードなので、外食は、あんまり派手にやるのはちょっといかがなものか、ということでね」
そう聞くと、「木村社長の判断は妥当だ」と感じる方も多いかもしれない。
確かに、過去最多の新規感染者が毎日のように更新されて1都3県での緊急事態宣言も発出されようかというこのタイミングで、いつものように「これが最高値で落札したマグロです」と大々的に宣伝をして、多くの客が「すしざんまい」に押し寄せたら、自粛ポリスの皆さんから「感染を広げるな」などと心ないバッシングが起きる恐れもある。現在の「出る杭は打たれる」というムードを踏まえれば、「今年は目立たない」方針になるのは極めて自然の流れだ。
ただ、一方でなんとなくモヤモヤする部分が残っているのも事実だ。
「すしざんまい」築地本店前では、302万円で落札したマグロが、木村社長の等身大フィギュアとともにディスプレーをされ、昨年ほどのインパクトではないにしろ集客に用いられた。また、2084万円という最高値をつけた卸売業者「やま幸」と、「銀座おのでら」を運営する株式会社LEOCも、『縁起物の「一番マグロ」で少しでも皆様を元気付けたい!』と告知して、1月5日のランチから振る舞っている。
どうせ客に振る舞ったり、集客に活用したりするのだから、億だなんだというレベルではないにしろ、「やま幸」らがつけたくらいの価格帯で競う選択もあったはずだ。しかも、この時期の縁起物の落札にはLEOCらが述べたように「世の中を少しでも明るくしたい」という意味もある。事実、東日本大震災の傷跡がまだ残る12年の初競りで、「すしざんまい」を運営する喜代村は5649万円で最高値落札している。
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