なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。
風評の出所、「同業者」が多い
「そんなの考えすぎだ」と笑うかもしれないが、あまり表沙汰にならないだけで、ビジネスの世界ではこういうことがよくある。筆者も報道対策アドバイザーとして、企業を執拗(しつよう)に攻撃してくる人のバックグラウンドや、ネットやSNSでの誹謗中傷、風評の出所を調べていくと、「同業者」にたどりつくことが圧倒的に多い。取引先、下請け、ライバル会社はもちろん、その企業から転職した元社員というケースも珍しくないのだ。
もちろん、単なる一消費者や、義憤にかられた「正義の人」が企業を攻撃するケースもある。しかし、寝る間を惜しんで悪口を書き込んだり、明らかに常軌を逸したような罵詈雑言を浴びせたりする人は、その企業に対して何か「特別な思い入れ」があるからだ。その企業によって不利益を被ったとか、競争に敗れたとか、自分の仕事が脅かされたとか。つまり、「同業者」である。
だから、昨年末、DHCの会長がライバルであるサントリーを執拗に叩いた文書を公表したことが大きな話題になったが、筆者からすれば特に驚くような話ではない。自分の身元を明かさずに裏で似たようなことを仕掛けている企業は山ほど存在しているのだ。
いずれにせよ、多くの経営者は「同業者を敵にまわすことの」の恐ろしさをよく分かっている。「すしざんまい」を一代でここまで大きくした木村社長も、それを分からないはずがない。だからこその「初競り自粛」ではなかったか。
もちろん、これは筆者の勝手な想像に過ぎないが、もしそうだとしたら、21年の日本経済の先行きはかなり暗い。
関連記事
- “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - スーツに見える作業着は、なぜ3倍ペースで売れているのか
スーツに見える作業着をご存じだろうか。2018年、水道工事を行っている会社が発売したところ、売れに売れているのだ。多くのアパレルが苦戦している中、なぜこの商品はヒットしているのか。グループ会社の社長に話を聞いたところ……。 - 焼肉業界で「大豆ミート」が主流になる、これだけの理由
外食産業が苦戦する中、「焼肉」が健闘している。カルビやハラミなどを好む人が多いだろうが、近い将来、肉を食べることができない日がやって来るかもしれないのだ。どういうことかというと……。 - 小さくなったカセットコンロ「タフまるjr.」は、なぜ2倍ペースで売れているのか
岩谷産業のカセットコンロ「タフまるjr.」が売れている。8月に発売したところ、想定の2倍ペースで売れているわけだが、なぜ消費者にウケているのか。サイズは小さいのに……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.