なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。
日本人らしい足の引っ張り合い
これまで何年間も市場関係者からの無言の圧力に屈することなく、最高値落札を続けてきた豪快な木村社長でさえも、「自粛」せざるを得なくなったということは、企業の「自粛ムード」もさらに加速していく恐れがある。
ただでさえ、コロナ禍で経済活動がダメージを受けているところに、ダメージを受けていないような企業も「出る杭は打たれる」ことを恐れて「萎縮」をしてしまう傾向があるのだ。
こっちは死ぬ思いで頑張っているのにうまいことやりやがって。みんなが大変なときに、調子に乗ったことをするなよ――。そんな感じで「相互監視社会」が昨年以上にパワーアップして、「オレたちも不幸なんだからお前も不幸になれ」という、「平等」好きな日本人らしい足の引っ張り合いが始まってしまう恐れもある。
コロナ禍が続く中で、今年もギスギスした1年になりそうだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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