2021年、再び来るか半導体ブーム リモートワークと巣ごもり需要が牽引(1/3 ページ)
コロナ禍は生活だけでなく産業構造にもさまざまな変化をもたらしている。その1つが、自宅でのリモートワークやゲームなどのエンターテインメントの拡大にともなう、半導体需要の盛り上がりだ。
コロナ禍は生活だけでなく産業構造にもさまざまな変化をもたらしている。その1つが、自宅でのリモートワークやゲームなどのエンターテインメントの拡大にともなう、半導体需要の盛り上がりだ。
楽天証券チーフアナリストの今中能夫氏は、1月9日に行った同社講演の中で、「半導体市場は、2018年10月の過去のピークをそろそろ抜く。1年はかからない。抜いたあとどこまで上がるかは分からないが、かなり大きな半導体ブームとなる」と予想した。
巣ごもり需要がスマホとPCブーム呼ぶ
半導体市場をけん引しているのはスマートフォンとPCだ。20年10月に発売された5G対応の新型iPhone 12は、最先端の5nm(ナノメートル)プロセスルールで製造されたCPUを搭載している。21年は5G普及が期待されるが、その性能をスペック通りに出すには半導体の進歩が必要だ。さらに、高性能なPCの需要も高まっている。背景にあるのは、リモートワークの普及だ。
「今回PCの技術革新が強く進んでいる。巣ごもった状態で高い生産性を上げるには、どうしても高性能なPCが必要になる。Appleが出した新型CPUの『M1』が5nm。これを搭載したMacBookが速いと話題になっている。米半導体メーカーAMDのCEOも、今年からはPCの技術革新だ、と話している。AMDは5nmのCPUを出してくるのではないか」(今中氏)
5Gによるスマートフォンの高性能化、そしてリモートワーク需要によるPCの高性能化。それらのニーズが高まれば、自動的にデータセンターへの投資も増加する。そして巣ごもり需要に伴うゲーム、米中摩擦に伴う軍事需要も堅調だ。
こうしたニーズから、半導体生産世界最大手の台湾TSMCの直近の売上高は10−12月期で過去最高。前年同期比で13%増と絶好調だ。
「TSMCの売り上げの半分が最先端半導体だが、残り半分は汎用半導体。こちらも相当盛り上がっている。盛り上がりすぎて、自動車向けの半導体が足りない状態だ」(今中氏)
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