2021年、再び来るか半導体ブーム リモートワークと巣ごもり需要が牽引(2/3 ページ)
コロナ禍は生活だけでなく産業構造にもさまざまな変化をもたらしている。その1つが、自宅でのリモートワークやゲームなどのエンターテインメントの拡大にともなう、半導体需要の盛り上がりだ。
業界のロードマップを描くTSMC
ハイテクIT企業といった場合、GAFAMなどのソフトウェアを中心とした企業が目立つことも多いが、いずれもその基盤には半導体があり、半導体の進化がソフトウェアを支えている。この半導体業界は、現在3つのスタイルの企業群がしのぎを削っている。
1つが、米インテルに代表される垂直統合型(IDM)の半導体企業だ。半導体の設計から製造まで自社ですべてを手掛ける。一方で、設計だけを行う米AMDや米エヌビディアといったファブレス企業、製造だけを行う台湾TSMCのようなファウンドリ企業が存在する。
この中で、近年大きな存在感を持つようになってきたのがファウンドリ企業だ。「これまで業界の盟主はインテルだった。ところが今重要なのはファウンドリ。TSMCであり、2番手のサムスンだ。TSMCのロードマップが非常に重要になっている」(今中氏)
新型iPhoneには、TSMCが製造した最先端の5nmCPUが搭載されている。さらに、今中氏は「25年には3nmに進歩する。その2年後には2nm、そして1.5nm。2nmはやることが決まっているし、1.5nmもやると思う。一方、インテルは7nmの生産に手間取っている」と、TSMCの計画について触れた。
ファブレス企業では、AMDとエヌビディアに注目だ。AMDが設計し、TSMCが製造したCPUが大きくシェアを伸ばしている。「AMDは家庭用シェアを伸ばしている。月によってはインテルに肉薄している。AMD+TSMCのコンビが大成功した」(今中氏)
さらに画像処理用半導体大手のエヌビディアは、ソフトバンクからARMを買収する予定だ。「ARMの買収に成功すれば、ARMべースのCPUを作るはず。インテルのサーバ需要も、AMDとエヌビディアに侵食されるかもしれない」(今中氏)
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