2021年、再び来るか半導体ブーム リモートワークと巣ごもり需要が牽引(3/3 ページ)
コロナ禍は生活だけでなく産業構造にもさまざまな変化をもたらしている。その1つが、自宅でのリモートワークやゲームなどのエンターテインメントの拡大にともなう、半導体需要の盛り上がりだ。
半導体産業全体に波及
高性能CPUのニーズは、CPU以外の部品需要にも影響を与える。例えばメモリだ。新型iPhoneでは5nmのCPUに対応してDDR5規格のメモリを搭載している。これまでの4G/5GスマホはDDR5が適合していなかったが、20年からDDR5の搭載量が急速に増えると今中氏は見る。
「メモリ大手のマイクロン・テクノロジーは、決算はぱっとしなかったが、見通しはけっこう強気だ。背景にあるのがDDR5の生産だ」(今中氏)
さらにメモリやCPUの製造装置、そしてテスト機器にも影響は波及する。旧型のDDR4規格のメモリテスター機器は、DDR5では使えない。そうなると、メモリテスターで世界シェア55%を占める国内企業アドバンテストにも追い風だ。
製造装置では、7nm以下の半導体回路を焼き付ける極端紫外線(EUV)露光装置をオランダの半導体製造機器メーカーASMLが独占している。「(ファウンドリ1位、2位の)TSMCとサムソンの間で、露光装置の争奪戦が始まっている」と今中氏。
こうした背景の中、TSMCの投資額は増加しており、21年の投資額は、20年の約170億ドルをかなり上回る220億ドルに達すると、今中氏は見る。需要の盛り上がりとともに、投資額も増加しており、世界最大の半導体製造装置メーカーである米アプライド・マテリアルズや、東京エレクトロン、レーザーテック、SCREENホールディングス、ディスコなど国内半導体製造装置メーカーの業績にも影響しそうだ。
半導体業界は、一般的に4年周期で好不況を繰り返す「半導体サイクル」を持つといわれる。18年始め頃から調整を続けていたサイクルは、19年末には底を付けたとも言われている。コロナ禍による好調な需要もあって、21年は大きく市場が伸びる可能性がありそうだ。
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