元社員逮捕のソフトバンク、「営業秘密がすでに利用されている可能性」指摘 楽天モバイルは否定:5G情報の不正持ち出し容疑
ソフトバンクは、楽天モバイルに転職した元社員が不正競争防止法違反の容疑で逮捕されたと発表。5Gなどの技術情報を不正に持ち出したとされる。ソフトバンクは営業秘密がすでに利用されている可能性を指摘、楽天モバイルは否定している。
ソフトバンクは1月12日、楽天モバイルに転職した元社員が不正競争防止法違反の容疑で逮捕されたと発表した。元社員はソフトバンク在籍期間に5Gなどの技術情報を不正に持ち出したとされる。ソフトバンクは持ち出された営業秘密がすでに利用されているとし、情報の利用停止などを求める訴訟を起こす予定。一方、楽天モバイルは情報を業務に利用していた事実は確認していないと発表している。
ソフトバンクによると、逮捕された元社員は2019年末に退職。退職申告から退職するまでの期間に、同社の営業秘密に当たる、ネットワーク技術に関わる情報を不正に持ち出していたことが20年2月に判明したため、同社が警視庁に相談していた。
元社員はソフトバンク在籍中、ネットワークの構築に関わる業務を担当。4G、5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士または基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報を不正に持ち出したという。一方、顧客の個人情報や法人客の取引先に関する情報は含まれていない。
ソフトバンクは、現在も楽天モバイルの業務用PC内に、持ち出された営業秘密が保管されており、「すでに何らかの形で利用している可能性が高い」と認識しているという。そのため、楽天モバイルに対して、営業秘密の利用停止と廃棄などを目的とした民事訴訟を提起する予定。また、元社員への損害賠償請求を含めた措置も視野に入れて、今後の対応を検討していくという。
一方、楽天モバイルは、社内調査を実施しており、「現時点までに、当該従業員が前職により得た営業情報を弊社業務に利用していたという事実は確認されていない」と発表。また、5Gに関する技術情報も含まれていないとしている。
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