このままでは第2の「珪藻土・アスベスト」事件が起きる ニトリやカインズは真相を解明できるか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
2020年末、珪藻土バスマットなどにアスベスト(石綿)が混入していたとして大騒動になった。はたして、真相は解明されるのか。結局は、“うやむや”にされてしまう可能性もある。
もっと深刻な事件が起きる可能性も
12月26日、ヤマダ電機を中核とするヤマダHDは、仕入先の不二貿易が20年7月以降に中国から輸入した8アイテムの珪藻土マットを、アスベストが混入していたとして自主回収すると発表。翌27日、ショッピングセンターのゆめタウンを展開するイズミでも、不二貿易から仕入れて、20年8月7日以降に販売した4商品について、基準値を超えるアスベストを検出したとして自主回収を決定している。
また、不二貿易の本体でも同月28日、20年7月以降に2万3658点販売した11種類の珪藻土バスマットにアスベストが混入してたため、自主回収を行うと発表している。同社の製品は44社で販売されており、影響が大きい。真相究明が待たれるところだ。
今回の珪藻土バスマット・アスベスト混入問題で改めて感じるのは、海外生産のリスクの高さだ。海外の工場に依存しなければ生活用品が揃わないような脆弱(ぜいじゃく)な経済で、国民の健康は守れるのか。国内生産では、「法規制前の素材を使ったから」と原因がはっきりしている。
マスクも、新型コロナの感染拡大の影響で、中国の生産が止まった途端に不足してしまった。今はマスクが足りているので、もう忘れてしまった人も多いかもしれないが、1回目の緊急事態宣言が発令された頃は、どの店に行ってもマスクは置いていなかった。
中国で生産する各社は協力工場と守秘義務を結んでいるため、どの工場で生産したかを明かせない。今回もそうなるとは断言できないが、真相が究明できず、うやむやになってしまいがちだ。14年に、マクドナルドが中国の工場から賞味期限切れの鶏肉を使ったチキンナゲットを輸入していたという事件があったが、本当のことがよく分からないまま、タイに工場が変わって、なんとなく終わっている。
安く製造するために、人件費が安いわりにはインフラが整った中国の協力工場を頼る企業は多い。しかし、全面依存は危険だ。国内にも生産基盤を持つ必要があるだろう。幸いにも今回は、製品が破損していなければ健康を害することはないが、類似したもっと深刻な事件が起こらないとは誰が保証できるだろうか。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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