コロナ終息後も「在宅勤務を続けたい」が半数以上 米国での調査結果:在宅勤務の経験者に聞いた
在宅勤務が可能な就業者を対象に、新型コロナが終息した後も在宅勤務を継続したいか聞いたところ、過半数が継続を希望。一方で、在宅勤務のデメリットも指摘されている。
本記事は、ニッセイ基礎研究所「米国では新型コロナ終息後も一定程度は在宅勤務を継続〜新型コロナで在宅勤務が急増、在宅勤務経験者のおよそ半数は終息後も在宅勤務の継続を希望」(2021年1月4日掲載、著者:経済研究部 主任研究員 窪谷浩)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
米国では新型コロナの感染拡大に伴い在宅勤務者が急増した。労働統計局(BLS)が20年5月から公表を開始した新型コロナを原因とする在宅勤務者数は、5月に4870万人(就業者の35.4%)となった後低下したものの、20年11月でも3,274万人(同21.8%)に上っている(図表1)。
また、20年11月の在宅勤務者の産業別就業シェアは、情報や金融業では就業者の4割超が在宅勤務を行っている一方、娯楽・宿泊業で7%、建設業で8%、卸売、小売業などの商業、運輸・公益で11%と乖離(かいり)がみられており、業種によって在宅勤務との親和性が異なっていることが分かる(図表2)。
さらに、親和性の低い娯楽・宿泊や小売業では、新型コロナの感染拡大に伴い感染対策として対面ビジネスが大きく制限されたことの影響を受けて、大幅な雇用喪失に見舞われた。もっとも、同じく就業シェアが低い建設業では前述の業種とは異なり感染リスクが低い屋外での作業が中心となっているほか、政府によりエッセンシャルワーカーに指定されたことで経済活動制限の対象外となっており、雇用への影響は限定的となった。このため、在宅勤務の親和性の低い業種内でも新型コロナに伴う雇用への影響は一様ではない。
一方、在宅勤務に関してピューリサーチが10月に実施した調査(※1)では、「自宅からほとんどの業務が可能」と回答した就業者の20%が新型コロナ流行前から程度の差こそあれ在宅勤務を行っていたことが示された(図表3)。また、調査時点では就業時間「全てが在宅勤務」との回答が55%に上ったほか、「ほぼ在宅勤務」や「一部在宅勤務」などを含めると8割超が在宅勤務を行っている結果となった。
次に、「全て在宅勤務」と「ほぼ在宅勤務」と回答した就業者を対象にした在宅勤務の理由に関する調査では、過半数の52%が「職場が閉鎖または利用不能となった」ことを挙げた一方、29%は職場が閉鎖されていないにもかかわらず、自ら「職場で働かないことを選択」したことも示された(図表4)。
自ら在宅勤務を選択した理由としては、「在宅勤務を好む」ことを主な理由とした回答が60%、ささいな理由とした回答が29%と合わせて89%に上ったほか、「新型コロナ感染に対する懸念」が主な理由とした回答が57%、ささいな理由が22%の合計79%と多くの就業者が職場での感染リスクを懸念していることが分かる。
新型コロナ流行前との比較一方、新型コロナ流行前後の変化に関する質問では、就業時間の大部分で在宅勤務を行っている就業者(以下、在宅勤務者)の57%が「同僚とのつながりが希薄になる」と回答しており、在宅勤務によって同僚とコミュニケーションをとることの難しさが示されている(図表5)。また、在宅勤務者の33%が「より多くの時間を働いている」と指摘しており、長時間労働が在宅勤務のデメリットとして認識されているようだ。
もっとも、長時間労働が指摘される一方で在宅勤務者の40%が「勤務時間をより柔軟に選択できる」と回答しているほか、「仕事と家庭の両立が容易になる」との回答も在宅勤務の29%となるなど、在宅勤務のメリットも指摘されている。
最後に、在宅勤務が可能な就業者を対象に、現在の新型コロナが終息した後も在宅勤務を継続したいかとの問いに対しては27%が就業時間「全てを在宅勤務」とすることを希望しているほか、「ほぼ在宅勤務」とすることを希望しているとの回答も27%となっており、過半数の54%が在宅勤務の継続を希望している(図表6)。
米国では足元で新型コロナの感染拡大に歯止めがかかっておらず、当面は感染者数の高止まりが見込まれている。もっとも、12月上旬からファイザーやモデルナが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっており、感染終息にむけた希望もでてきた。今後、新型コロナの感染が落ち着き、閉鎖されていた職場が再開されるほか、職場での感染懸念が後退することで、就業者の職場復帰が予想される。
しかしながら、新型コロナの感染拡大で在宅勤務を経験した多くの就業者が在宅勤務のメリットを認識して、在宅勤務の継続を希望しているため、新型コロナが終息した後も一定程度は在宅勤務を継続することが見込まれる。在宅勤務は、新型コロナが促した就業形態の構造的な変化の例といえるだろう。
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