「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよと」――。サイゼリヤの社長がキレたわけだが、その気持ちも分からないわけではない。東京都の感染拡大防止協力金(1日6万円)をみると、中小企業や個人事業主には配られるのに、なぜ大手チェーンには支給されないのか。その背景にあるのは……。
ロビイングをすれば
日本商工連盟の収支報告書をみると、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に1200万円、自公の議員を中心に400万円を「寄付」しているほか、政治資金パーティーの会費を支払うなどの「組織活動費」として約3400万円を費やしている。自民党や議員らの寄付額だけでも、外食業界のロビイング費を軽く超えてしまっているのだ。
また、日本商工会議所と並んで、中小企業三団体の一つに数えられる全国商工会連合会の政治団体「全国商工政治連盟」も国民政治協会への250万円をはじめ、約4600万円を与党の議員や、全国商工会連合会が擁立した組織内候補などに寄付している。
もちろん、これだけしっかりとロビイングをすれば「政治」もちゃんと応えてくれる。その業界が抱えている問題の解決に動いてくれるのだ。
例えば、全国商工会連合会がおよそ4600万円を寄付に費やしたこの年の5月31日、第58回通常総会懇親パーティーに出席した安倍首相(当時)は「中小・小規模事業者の皆さんこそ、我が国の宝であります」(首相官邸Webサイト 2019年5月31日)と持ち上げてこんな「協力」を呼びかけた。
「全国1660に及ぶ商工会の皆さんの御協力が、何といっても、不可欠であります。皆様と強力なタッグを組んで、共に、新時代を切り拓いていきたいと願っています」(同上)
この「協力」とは2カ月後の7月21日に控えた参議院議員選挙のバックアップに他ならない。では、なぜ首相はこんなことが言えるのかというと、業界団体が以前からロビイングしていた支援策をきっちりと実現したからだ。14年6月に、小規模企業振興基本法ができたことを祝う「感謝する集い」には、安倍首相だけではなく、石破茂自民党幹事長、甘利明経済財政政策担当大臣、茂木俊充経済産業大臣、そして井上義久公明党幹事長と政府与党の重鎮がそろって出席。そこで、安倍首相はこんなあいさつをしている。
『商工会全国大会で、「中小企業基本法があるのに小規模企業基本法がな いのはおかしい」と申し上げた。この発言から1年半、ついに本日小規模基本法が成立し、皆様との約束を実行できたことに感無量である』(Shokokai 2014年8月)
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