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マツダの第6世代延命計画は成るか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/7 ページ)

マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。

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 クルマは走行中揺れる。当たり前の話だが、ドライバーはそれに応じて揺すられる。そこでアクセル開度を正確に保つためには足首がシーソー的に動かないように筋力でバランスを取ってやらなくてはならない。

 さて、脚と足は医学的に別の部位だそうだ。分岐点はくるぶし。くるぶしから下は足、その上、鼠径(そけい)部までは脚になる。

 ペダルを踏み込む動作は、狭義には「足」の仕事である。足首から先のシーソー運動を生むのは主にふくらはぎにある「下腿三頭筋」である。しかしペダルを戻す作業は、前脛、つまりスネの外側にある「前脛骨(ぜんけいこつ)筋」の仕事なのだ。

 長時間デリケートな操作をすると疲労するのはこの前脛骨筋である。もっと疲労を抑えて操作を自然にするためにどうするかを考えれば、アクセルペダルのリターンスプリングの強さを上げるのは当然のアプローチだろう。


CX-5は年次改良でアクセルペダルの踏力特性を変えてきた(マツダ資料より)

 重いペダルだと踏み込みに下腿三頭筋の筋力を使って疲れそうに思うだろうが、この筋肉はそもそも歩行でメインに使う筋肉の一つ。力もあるし持久力もある。しかも、SUVのようなアップライトな姿勢であれば、踏み込みに脚全体の重さを使うことも可能だ。もっといえば、脚全体を動かす操作で太ももの筋肉を使うこともできる。

 つまり、いろいろと余力のある下腿三頭筋の心配をするよりも、普段あまり使わない前脛骨筋の負荷を軽減した方が、疲労は減らせるし、操作の精度も向上する。マツダでこの開発を担当したエンジニアによれば、これらの筋肉は最終的に腹筋とも連動しており、スプリングの反力を上げて前脛骨筋の負荷を減らすことは、すなわちドライバーの全身疲労の軽減につながるのだそうだ。

 そして脚と足の筋肉はそもそも負荷の小さい領域で微細な操作をすることに向いていない。普段体全体の体重を支えて動かすことを担当しているのだから、負荷が大きい時の方がやり易いのは直感的にも分かる。

 つまりはこういう人体のメカニズムを理解すれば、ペダルを軽くするのは間違いで、程度問題ではあるが重くした方が良いことになる。

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