終電繰り上げは、本当に必要だったのか:実際は、見かけだけ?(3/4 ページ)
1月20日から、いよいよ「終電繰り上げ」運行が始まった。繰り上げの決定は、2回目の「緊急事態宣言」発出後だったため慌ただしい導入となったが、報道によれば利用者に混乱はなかったようだ。今回は、なぜ混乱が起きなかったのか、どのような繰り上げが行われたのかを検証したい。
各社間で調整し、運行方法を模索
今月の「緊急事態宣言」の発出にあたり、1都3県の知事や国は各鉄道事業者に終電の繰り上げを要請した。終電を繰り上げることにより、感染源となる飲食を伴う会合を抑制しようとしたからだ。
飲食を伴う会合などの人が集まる場から、新型コロナウイルスの感染が広まるという見方は多くある。そんな中、飲食店の営業は午後8時までとなり、それ以降はテイクアウトで対応するケースが増えている。
しかし鉄道のダイヤは、簡単には変えられない。では、そもそも今年3月に予定しているダイヤ改正での「終電繰り上げ」は、どんな理由によるものだったのか。
「終電繰り上げ」自体は、新型コロナウイルスの感染が国内で確認される前から、JR西日本がメンテナンス時間の確保や労務難を理由に計画していた。JR東日本も、同様の理由を示している。それを見た私鉄なども、やはり同様の理由で繰り上げを行うとしている。
つまり、コロナ禍に端を発する終電時間帯の利用者減は、最後の一押しになったかもしれないが、元来の「終電繰り上げ」の理由は、近年続いてる問題の解決にある。
そこへ1都3県の知事などから「感染拡大を抑制するために終電を繰り上げてほしい」という要請が来た。だが鉄道事業者たちは、一致団結して「コロナ禍と終電繰り上げは別の問題だ」と突っぱねることもできなかった。
鉄道は社会の中で存在しているものであり、社会の状況を鑑みて、行政などの要請には従わなくてはならない。理不尽ではあるが宿命だともいえる。
そこで鉄道各社は調整を行い、13日午後のJR東日本を皮切りに、その日のうちに私鉄なども発表を行った。そもそも行政の要請で終電を繰り上げる、という状況は珍しい。しかも要請から数日のうちに、運行計画などをまとめなければならない。
今年3月に予定されているダイヤ改正自体を前倒しする案もあったが、調整が困難で不可能だった。結局、時刻表には記載されている終電を運行しない、という形での運用になった。これ自体は、対応としては普通だろう。それでも鉄道側としては、タイトな日程だったのだ。
では、どのように終電を繰り上げたのだろうか。
関連記事
- 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「緊急事態宣言」再発令! 鉄道会社はどうなる?
2度目の「緊急事態宣言」が1月8日に発出された。1度目の宣言でも大きなダメージがあった鉄道各社だが、2度目の宣言が与える影響はどのようなものだろうか。利用者減少や夜間帯の外出自粛、終電繰り上げなど、新型コロナ対策に比例して困難の増す、東京圏の鉄道を中心に考える。 - なぜ? 首都圏で「通勤向け特急」が増えている背景
JR東日本が、通勤向けの特急に力を入れている。すでに常磐線の「ときわ」、高崎線方面「スワローあかぎ」、中央・青梅線方面の「はちおうじ」「おうめ」が運行されているが、来春のダイヤ改正では、特急「湘南」が東海道本線方面にデビューする。これら通勤向け特急が運行される背景を考えてみたい。 - 「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケ
「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよと」――。サイゼリヤの社長がキレたわけだが、その気持ちも分からないわけではない。東京都の感染拡大防止協力金(1日6万円)をみると、中小企業や個人事業主には配られるのに、なぜ大手チェーンには支給されないのか。その背景にあるのは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.