終電繰り上げは、本当に必要だったのか:実際は、見かけだけ?(4/4 ページ)
1月20日から、いよいよ「終電繰り上げ」運行が始まった。繰り上げの決定は、2回目の「緊急事態宣言」発出後だったため慌ただしい導入となったが、報道によれば利用者に混乱はなかったようだ。今回は、なぜ混乱が起きなかったのか、どのような繰り上げが行われたのかを検証したい。
終電後も乗客のいない回送を運行
JR東日本などでは、乗客が利用する列車の終電は早められたが、それ以降に移動させる必要がある列車は、回送列車とすることも多い。そのため終電後は、乗客のいない列車がひっそりと走ることになる。
朝の始発の繰り下げはないため、運行時間前に車両を始発駅に到達させるには、回送として送り込んでおかなくてはならない。列車の運用は、乗務員のスケジュールも細かく決められており、簡単に変えられるものではないのだ。また運用上、差し支えのない列車は「運休」という形で終電を繰り上げることになる。
なぜ、こんな面倒なことになったのか。
1つは前述の始発列車との対応関係だ。空きスペースが少ない駅に列車を送り込むための終電の場合は、終電の運行は繰り上げるものの、乗客を乗せずに回送としての運行は続けることになる。そうしないと鉄道の運行は回らないのだ。
また各事業者のプレスリリースでは、1月20日に開始された「終電繰り上げ」の期間を「〜当面の間」としている。これは、現在発出されている「緊急事態宣言」は、当初2月7日をめどに終了する予定だが、昨年4月の「緊急事態宣言」が延長されたことから、今回もその可能性が高い。それを見越して区切りをつけず、「当面の間」としたのだ。
この判断は正しい。もし日程を区切って「終電繰り上げ」をやったとしたら、「緊急事態宣言」終了後にどうするかを判断せねばならなくなる。「緊急事態宣言」がいつまで延びるか不透明な状況では、終了の期日を決めずにあいまいにしておく必要がある。ここに鉄道の「困惑」が現れているのだ。
元々、JRのダイヤ改正は3月13日を予定しており、まだ日程を発表していないその他の事業者も同じ日に行うと思われる。ダイヤ改正前に「緊急事態宣言」が解除され、終電繰り上げや回送の運行などを元に戻すことになったら……ということを見越しているとも考えられる。
世の中の動きに呼応した、現実的な対応を要求されたため、鉄道は「終電繰り上げ」を行うことになった。しかし、すでに乗客は終電時間帯にはほとんどおらず、実質的にこの対応は必要なかったのではないか。
世の中の無理難題に振り回されている鉄道事業の大変さに、敬意を表するしかない。
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