SaaS企業の時価総額はなぜ高いのか?(1/5 ページ)
この数年、SaaS企業は新興企業向け株式市場マザーズのIPOにおいて大きな存在感を見せています。新興市場のけん引役ともいえるほど躍進をしたSaaS企業ですが、果たしてこの勢いは、21年以降も続いていくのでしょうか。
この数年、SaaS企業が新興企業向け株式市場マザーズのIPOにおいて大きな存在感を見せています。
過去5年の同市場におけるIPOでは、時価総額上位に多くのSaaS企業が名を連ねています。特に2019年以降においてはSansan、フリー、プレイドなどが初値ベースで時価総額1000億円を超えるなど、大型案件が相次ぎました。
新興市場のけん引役ともいえるほど躍進したSaaS企業ですが、果たしてこの勢いは、21年以降も続いていくのでしょうか。
この記事ではSaaS企業のKPIデータを提供する「企業データが使えるノート」の集計に基づき、SaaS企業のIPO、時価総額の背景について理解を深めると共に、後半ではUB Ventures代表の岩澤氏に今後のSaaS IPOの動向について伺っていきます。
SaaS企業 IPOの変遷
「クラウド企業」の台頭 〜2015年
まず、代表的なSaaS企業のIPOを過去から振り返ってみます。
時系列では、2000年にグループウェアを提供するサイボウズ、06年に食材の受発注システムを提供するインフォマート、15年に経費精算システムなどを提供するラクスが上場を行っています。
今でこそSaaS企業の筆頭として挙げられるサイボウズは、16年まではパッケージ型ソフトウェア売り上げがメインで、徐々にクラウド型での提供に移行した経緯があります。
インフォマートについても、創業より食材の商談サービスからビジネスを開始しており、その後、食材卸企業と店舗をつなぐ受発注システム、請求書システムなどのクラウド型サービスが主軸となっていきました。
15年に上場を行ったラクスは「自社でサーバを持たずに利用が可能なソフトウェア」を提供する“クラウドサービス"という位置づけでIPOを迎えています。
"SaaS"はクラウド型のソフトウェアですので、呼び方は違えど、これらの企業はSaaS企業としての先駆者であり、まだ一般的な注目がなされていない時期から早期に取り組んだことで先行者メリットを享受できた企業でもあります。
成長モデルに着目をすると、これらの企業においては昨今のSaaSスタートアップに見られる「VC(ベンチャーキャピタル)から資金調達を得て先行投資型で高成長を遂げる」形ではなく、「自己資本を中心として着実に利益を出しながら、投資を行う*」ことで成長を果たしてきました。
* なお、サイボウズ、インフォマートもベンチャーキャピタルによる出資を受けていますが、赤字を許容するようなSaaSビジネスそのものへの投資ではないと位置付けています
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