ノーベル賞のオークション理論 ビジネスに取り入れることは可能か:適切なマッチング(2/3 ページ)
米スタンフォード大学のポール・ミルグロム教授とロバート・ウィルソン名誉教授が、「オークション理論」でノーベル経済学賞を受賞した。確かに、オークションであれば、欲しいと思う人が一番高い値をつけてくれるまで交渉が進むので、売り手としても納得感が高い。
オークション理論は、結果として、欲しいと思うニーズの強さと価格が比例し、適切なニーズのもとに適切な価格で市場を形成することができると思われるが、一見すれば、われわれのビジネスにおいても、原則的には、ニーズの強さによって費用は決まっていく。
引く手あまたのコンサルタントや講師のフィーは上がるし、誰も欲しがらない人は費用も安い。(これはオークションではなく、いわゆる「見えざる手」か)
ただし、そういう場合であっても、大半の場合、1対1の交渉となる。仕事として成立させたいときは、見積りとして出す、あるいは見積りをもらうことから始まることが多い。どうしても買い手が低予算でお願いしたい場合は、最初から「この金額でお願いできますか」という投げかけから始まる。
同時期に引き合いがあれば、交渉事として、売り手から「この金額までいただけませんか」と返すことはできる場合もあるが、ビジネスは人と人とのつながりのなかで行われるのが基本なだけに、通常の関係性のなかで、オークション的に価格交渉を行うのは、不可能に近いだろう。どうしてもそこは買い手に優位に運ぶことのほうが多い。
結果的に、治まるところで価格が折り合い、お互い、そこそこの満足感で交渉がまとまったとしても、あくまで自分達の存在する周辺の市場規模においての話であり、適切なマッチングがあった上での話かといえば、そうでもない。
現実としては、ほとんどの中小企業・小規模事業者は、所属する市場の仕組みのなかで、ビジネス慣例に基づいて取引されていることのほうが多く、ニーズの高さと価格がピークのところで取引が成立しているケースは少ないだろう。
実際に、本当に素晴らしいモノやサービスを提供できるのに、ニーズを持つ人に届かず苦労する企業も多い。現実に、われわれにもそういう相談は多いが、大半の場合、買い手の発見を待たねばならない。
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