日立、ソニー、IHI……なぜ、企業はコングロマリット化するのか:日立建機の売却検討報道から考える(3/3 ページ)
多種多様な事業を傘下に持つ事業形態は「コングロマリット(複合企業)」と呼ばれ1980年代の米国で全盛期を迎えた。日本でも、総合商社に限らず、もともと旧財閥グループを中心として複合企業体が多く、日立、IHIやソニーなどはメーカー型の複合企業の典型である。なぜ、企業は複合企業化するのか? 識者が解説する。
日立やソニーが目指す戦略的複合企業体という選択肢
専業化によって自社の強みをとことん追求することで企業価値を高めていくのか、それとも、戦略的複合化を通じてシナジーによる新たな価値の創造と事業全体の安定性を求めていくのか。これまでは、世界的に前者の考え方が主流であったが、これには狩猟民族的な発想と決断(徹底的な集中と選択)が必要であり、ソフトバンクGや日本電産といった一部のオーナー経営企業を除き、農耕稲作文化のしみ込んだ日本の企業文化に果たしてなじむかどうかは疑問である。
更には、新型コロナが収束しても先の見通しも不透明な不確実性の高い経済環境が続いていくこれからの時代を生き抜いていくためには、日立やソニーが目指す戦略的複合企業体という選択肢も有効ではないだろうか。ただし、企業価値が市場で適正に評価されるためには、傘下事業のそれぞれのグループ内での位置付けと関連性、そして財務面を含めた十分な情報開示が鍵となる。
著者プロフィール
斎藤 忠久
グロービス経営大学院教員(ファイナンス理論)。株式会社富士銀行(現在の株式会社みずほフィナンシャルグループ)を経て、株式会社富士ナショナルシティ・コンサルティング(現在のみずほ総合研究所株式会社)に出向、マーケティングおよび戦略コンサルティングに従事。その後、ナカミチ株式会社にて経営企画、海外営業、営業業務、経理・財務等々の幅広い業務分野を担当、取締役経理部長兼経営企画室長を経て米国持ち株子会社にて副社長兼CFOを歴任。その後、米国通信系のベンチャー企業であるパケットビデオ社で国際財務担当上級副社長として日本法人の設立・立上、日本法人の代表取締役社長を務めた後、エンターテインメント系コンテンツのベンチャー企業である株式会社アットマークの専務取締役、株式会社エムティーアイ(東証1部上場)取締役兼執行役員専務(CFO)を経て、現在グロービス経営大学院教授(ファイナンス理論)。写真はグロービス経営大学院提供
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