連載
中国の春節は「Not Go To トラベル」〜帰省させず特典配布:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/5 ページ)
昨春に新型コロナウイルスをほぼ収束させた中国で、再び感染者が増えている。中国政府は「民族大移動」とされる春節の帰省による感染拡大を危惧し、「Not Go To トラベル」キャンペーンともいえる、さまざまな支援を提供するという。「帰省しないで居住地にとどまる人」へどんな支援があるのだろうか。
帰省には陰性証明書が必要
昨年2020年の春節休みは1月24日からだったが、前倒しで休暇を取った武漢市民が市外に出て感染を全国に広げたため、中国政府は1月23日に同市をロックダウンした。
今年の春節は2月12日で、法定休暇は11〜17日の1週間だ。中国当局は春節の前後を含む40日間(1月28日〜3月8日)に、17億人が移動すると見込んでいる。コロナ前の2019年より4割少ないが、より感染力が高いと言われる変異種が海外で広がり、中国でも海外からの流入、無症状感染者からの拡大が確認される中で、移動そのものがリスクであることは間違いない。
都市部で働く出稼ぎ労働者が春節に帰省し、感染を広げるのを警戒し、中国国家衛生健康委員会は1月23日、帰省を予定する農村出身者向けのガイドライン」を公表した。
- 帰省にあたっては、7日以内に発行されたPCR検査の陰性証明書が必要。また、帰省後は14日間自宅にて健康観察を義務付け
- 1月28日以降に帰省した人は、帰省7日目と14日目にPCR検査を行う
- 自宅健康観察期間は体温と健康状態の報告が必要だが、外出は禁止されない
- 帰省を受け入れる村は、帰省者の記録、健康観察、啓発活動などを体系的に行う
帰省そのものを禁じてはいないが、かなり面倒な手続きを課している。さらにコロナの拡大初期から対策を指揮してきた国家衛生健康委員会専門家グループ長の鍾南山氏も、手を合わせて「帰省しない皆さんに感謝します」と呼びかける動画を配信し、帰省しづらい空気が広がっている。
関連記事
- 6億人が旅行の中国「国慶節連休」、それでも売れる「巣籠もり家電」
中国で「国慶節」の8連休が10月1日に始まった。昨年の同連休では、旅行者数がのべ7億8200人、国内観光収入が6497億1000万元(約10兆円)だったが、コロナ後初となる今回の大型連休で、旅行と消費の動向が注目される。また家電セールも好調だ。 - 中国でも評価割れる日本のGo To キャンペーン、「第2波の中で無謀」「観光業救う苦肉の策」
日本政府のGO To キャンペーンを中国メディアが報じたが、評価が割れている。キャンペーンの背景にある観光業界救済へ理解を示しつつも、コロナ感染対策の側面では無謀ともしている。一方中国はコロナ感染をほぼ収束させ、北京市は7月20日に市内の観光施設などの入場制限を緩和し、同市をまたぐ団体・パック旅行の販売を解禁した。中国では、感染ルート特定が行動の抑止力になっている。 - ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(後編)
アリババのジャック・マー(馬雲)前会長が、2カ月余り公の場に姿を現さず、消息についてさまざまな憶測が流れている。氏が2020年10月24日のスピーチで、中国の金融当局を批判したため、習近平国家主席らの怒りを買ったとの説もある。今回は、筆者訳のスピーチ全文の後編を紹介する。 - ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(前編)
2カ月余り公の場に姿を現さず、その消息がさまざまな憶測を呼んでいるアリババのジャック・マー(馬雲)前会長。2020年10月24日に氏が行ったスピーチが、中国の金融当局を批判し、習近平国家主席らの怒りを買ったとの説もあるが、実際の発言と大きくずれた報道も増えている。そこで、筆者訳のスピーチ全文を全2回に分けて紹介したい。 - 中国「感染リスク判定アプリ」、“病歴・飲酒・喫煙データ収集構想”に波紋
日本では開発の遅れが取り沙汰される新型コロナウイルスの「接触確認アプリ」だが、中国では2月初旬から運用が開始されている。ここでは中国アプリのこれまでと現状、第2波に備えた拡充構想とそれに対する市民の反応をレポートする。 - コロナ対策、現地日本人が「中国は安全」と思えるこれだけの根拠
新型コロナ感染が世界で最初に爆発した中国も現在はほぼ収束。筆者は、中国の感染拡大期に多くの中国在住者を取材し、拡大防止策などを著書で紹介した。ここでは同書に登場する「中国で働く日本人」たちに聞いた、5月末現在の中国各地の状況をお伝えする。 - 延々と自画自賛、退屈すぎる中身だからこそ見える中国の「メンツ」 〜数字で読み解く新型コロナ白書(後編)
中国政府は、新型コロナウイルスへの取り組みをまとめた白書を6月7日に公表した。内容は、あくまでも中国政府による対応の正しさを強調するというもので、対応に当たった専門家やIT企業には一切触れていない点も特徴だ。白書は5段階の時系列で構成されるが、今回は3段階目以降を紹介する。 - 米国との密な連絡、習近平主席の指導 〜数字で読み解く中国の新型コロナ白書(前編)
中国政府は6月7日、新型コロナウイルスの初の患者発生から封じ込めまでの取り組みを白書として公表。内容は、米国などの海外からの批判に対し、中国がいかに適切に対応したかをアピールしたもので、時期により5段階に分かれている。ここでは、2020年2月中旬までの最初の2段階を紹介する。 - 「倍返しより転職しろ」「メガバンクは修羅の世界」半沢直樹にはまる中国人の突っ込み
TBSドラマ「半沢直樹」の続編が中国でもブームで、中国最大の書籍・ドラマレビューサイトでは、10点満点で9.4点をマーク。「勧善懲悪」の分かりやすさが幅広く人気を集める理由だが、結果として、日本の企業文化に対する衝撃や誤解も視聴者から湧きあがっている。ここでは、中国のSNSやブログで続出している突っ込みと考察を紹介したい。 - アリババ「独身の日」セール、2020年は期間4倍 〜「ニューノーマル」で構造見直し
世界最大のECセール「独身の日」が中国で始まった。売上高を更新し続ける同セールだが、インタネットやEC人口は頭打ちで、構造改革を迫られていた。ここでは、セールの歴史をおさらいしつつ、コロナ禍の「ニューノーマル」が、構造の見直しに好機となっている今年の動きを紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.