世界から非難されるミャンマー 日本企業は“ビジネスの危機”を乗り越えられるのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
ミャンマーで軍によるクーデターが発生。米国が経済制裁を強化する可能性もあり、現地に進出する多くの日本企業のビジネスが制限されることに。そして中国の存在感も強まる。この状況を救えるのは、ミャンマーとつながりを築いてきた日本政府だ。
「不正選挙」を口実にクーデター
まず、そもそもミャンマーで何が起きたのかを見ていきたい。
ミャンマーでは20年11月8日に総選挙が行われた。民主活動家だったアウンサンスーチー国家顧問が率いる与党の国民民主連盟(NLD)と、国軍系政党である連邦団結発展党(USDP)が議席を争う形となった。
結果はNLDの圧勝。改選議席の83%を獲得した。これにUSDP側は納得がいかず、選挙で不正が行われたと訴えた。その不正とは有権者名簿に絡むもので、その数は800万件以上になると国軍は発表した。
不正選挙といえば、米国で11月3日に行われた大統領選挙を思い出す。ドナルド・トランプ前大統領が大統領選挙で不正が行われたとして大騒ぎした。だが確たる不正の証拠が出なかったために、その主張は軒並み却下されたが、トランプ支持者たちが1月6日に米連邦議会になだれ込み、占拠する事態になった。結局、選挙結果が覆るわけもなく、1月20日にはジョー・バイデン大統領が誕生、政権が発足している。
それを参考にしたのかどうかは分からないが、ミャンマーでも不正選挙だと国軍が騒いだのだった。そして2月1日、当選した議員らを集めて首都ネピドーで議会が始まるはずだったが、国軍は不正選挙で当選した人たちで議会を開催することはできないとして、ウィンミン大統領やスーチー国家顧問を拘束。第一副大統領だったミンスエが非常事態を宣言し、全権を国軍のトップであるミン・アウン・フライン総司令官に委譲した。事実上のクーデターだ。
人権問題に厳しい態度で臨むことが予想されるバイデン政権は、ミャンマーの問題を優先事項であると発表。米国はトランプ政権時にも、ミャンマー国内の人権問題になっているロヒンギャ問題(ミャンマー国内に暮らすイスラム教徒で、ミャンマー政府は彼らを国民と認めずに迫害している)で、国軍のトップなどを経済制裁の対象にしてきた。
そんなことから、バイデン政権はトランプ以上に厳しい経済制裁を科す可能性があると見られている。まず対象となるのは国軍関係となるだろう。
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