「他者に勝つ」より前に、なにをすべきか:勝負は2つある(1/3 ページ)
勝負には2つあります。「他者との勝負」と「自己との勝負」。自己との勝負を「克己(こっき)」といいます。私たちは一瞬一瞬、「自分に克つか/妥協するか」という“篩(ふるい)”にかけられています。その無数の内なる戦いの蓄積が、自分のなりゆく先を決めています。
著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
私たちは競争社会に生きています。受験、就職、会社の中での昇進、事業・商売……。つねに他者との勝負があり、他者との比較を通じて、自分の存在を浮き立たせたり、逆に沈ませたり。
会社の中でのキャリア形成は、よく「すごろく」に喩(たと)えられます。昭和の時代ほどガチガチなすごろくではないにせよ、令和の時代においてもその本質構造はあまり変わっていないように思えます。
このキャリアすごろくは、他者よりも「多く・速く・上手に」、組織が要求する成果をあげてゴールを目指すものです。競走の勝ち負けは「数値」で判断されます。サイコロの目がどう出るかという運も左右します。
こうした組織内のキャリアすごろくに限らず、他者と比べて「勝った/負けた」という競争や評価は現代社会で生きていく上でついて回るものです。例えば、あなたが何か趣味活動をやっていて、その情報を「ツイッター」や「インスタグラム」などのSNSで発信しているとしましょう。あるとき趣味仲間が集まり、互いのフォロワーの数が何人いるかの話題になった場合、やはり自分と他人との数の違いが気になるでしょうし、それによって自慢できたり悔しがったりします。嫉妬もするかもしれません。
もちろんこうした他者との勝負に勝つにこしたことはありません。しかし、勝つこと自体を過度に目的にしたり、他者との比較に過度に縛られたりするとよからぬことも生じます。すなわち、不正が起こったり、精神を病んだり。
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