EVはクルマか否か アップルも参入の戦いで「敗れる者」と「残れる者」:高根英幸「クルマのミライ」(1/4 ページ)
100年に一度の大転換期と言われる自動車市場。電動化を進める自動車メーカーの一方で、最初からEVで攻勢をかける新興勢力が続々と誕生している。その一方で北米市場では、テスラは顧客満足度では主要なブランドでは最下位となるほど、ユーザーは細かなトラブルに見舞われている。
100年に一度の大転換期と言われる自動車市場。電動化を進める自動車メーカーの一方で、最初からEVで攻勢をかける新興勢力が続々と誕生している。大企業ゆえの安定感の一方で、既存自動車メーカーは大きな変革を一気に成し遂げることは難しい。対して、新興メーカーは、投資家や消費者の関心を集めるべく、スペックや機能で強烈なインパクトを与える商品を作り上げてくる。
これまでの市場でひしめき合うライバルたちだけでなく、まったく違った角度から飛び道具を持って参戦してくる新人が続々と登場しているのである。
20年、30年という年月をかけて徐々にEV化を進めようとしていた自動車メーカーに対して、一気に陳腐化してしまいかねないような刺激的なクルマが新興メーカーから登場するかもしれない。いわば自動車メーカー戦国時代に突入しているのである。はたして、どのブランドが生き残り、どれだけのブランドが淘汰(とうた)されていくのか。
クルマをどんな基準で選ぶべきか。それは異業種から参入したブランドであっても変わらないはずである。国ごとに登録制度がある以上、安全性や信頼性、耐久性において、その国で定められた品質に達していることが求められる。すなわちクルマは、PCや家電とは決定的に異なる部分がある。それは乗員や周辺の人間の生命を左右する機械だということだ。
自動運転の実現により、ドライバーは走行中に本を読んだり、PCやスマホを使って仕事や連絡、ゲームなどを楽しんだりできるようになるだろう。しかし、クルマに問題が起これば修理する責任は生じる。メンテナンスを怠ってシステムがエラーを起こし、事故を起こせば、所有者に責任が及ぶことになる
だからこそ我々は、クルマを武器にしてしまうような「あおり運転」はしてはならないし、運転の責任から逃れたいユーザーは完全自動運転の実現を心待ちにしている。しかしながら、タクシーのように完全に他人、あるいは自動運転タクシーのように企業側が運転を監視や制御している場合以外は、ドライバーは完全に運転の責任から逃れることはできないだろう。
クルマへの責任は、製造者であるメーカーにも求められる。交通事故の9割はドライバーのミスによるものだといわれているが、自動運転が普及すればそうしたミスは減って交通事故全体は激減するだろう。その一方で、残りの1割だった道路環境やクルマ自体が起因の事故は、割合が増えることになる。自動運転システムに問題があったとすれば、自動車メーカーやそれを開発したサプライヤーに責任が及ぶことは間違いない。
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