東北新幹線運休で本領を発揮した快速列車たち 鉄道の“責任”と“誇り”が見える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
2月13日の地震の影響で東北新幹線が一部運休。JR東日本はすぐに代替手段を準備した。引退間近の185系を臨時快速に使用するシーンも。悪天候の中で運行した「ひたち」では、受験生への配慮が話題になった。10年前の東日本大震災の時のように、責任感や誇りが見えた。
感動を与えた「ムーンライトひたち」
2月15日から常磐線で特急「ひたち」の延長運行が始まった。常磐線は日暮里〜岩沼間を太平洋岸沿いに結ぶ路線だ。岩沼駅は仙台駅の少し南側にある。「ひたち」のほとんどの列車は品川・上野〜いわき間だけど、3往復だけ仙台駅まで運行する。その列車に加えて、15日は下り2本、上り1本について、いわき〜仙台間を延長し、快速列車扱いとして利用者の負担を軽くした。新幹線に比べて時間がかかることに対する配慮だろうか。
ところが運が悪いことに、この日は日本列島を低気圧が縦断した。北関東は午後から大雨となり、常磐線の一部区間では規制値に達し、速度規制や運転見合わせの見込みとなった。仙台発午後1時57分発の「ひたち22号」も運休が検討された。しかし、報道によれば「乗客からの強い要望」「東北新幹線の不通」を考慮して、出発の遅れと東京着が翌朝になることを承知の上で運行開始。4時間遅れの午後5時55分に発車した。
上野着は16日午前2時38分だった。その時間に連絡する交通手段はないため、始発電車が出る午前4時45分まで車内での滞在が許された。仙台発車時点では乾パンと水が配られ、途中駅でもパンと水とマスクが配布された。上野駅ではおにぎりとお茶が配られた。乗客は約200人。窮屈な時間だったと思われるけれど、JR東日本としては異例の手厚い対応だった。
車内では乗務員が巡回し、受験生の有無を確認した。到着後の接続を確認するためだ。朝日新聞によると、受験生だという申告はなかったという。しかし、その問いかけが「ひたち22号」を走らせた理由として広まった。「受験生がいるかもしれない」「もしいたらどうする」という配慮があった。
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