お店が近所にやってくる! 三井不動産が「動く店舗」で打ち出す、買い物体験の新機軸:「移動」を新たな成長分野に(2/3 ページ)
三井不動産が「移動商業店舗」事業を始動。飲食や日用品、サービスなどの移動店舗を人々の生活圏で展開する。場所や時間などで変わるニーズに柔軟に対応。店舗にとっては低コストで直接客と触れ合う機会になる。“移動”を新たな成長分野としていく方針だ。
柔軟な出店で「思いがけない出会い」も
お店が“移動”する取り組みには、既存の店舗では多様化する消費者のニーズに応えきれなくなっているという背景もある。働き方や暮らし方の変化によって、従来型の店舗やオフィスなどの建物では満たせないニーズも出てきた。特に、新型コロナによる環境変化は、「オフィスで働く」「通勤を考慮して暮らす場所を決める」といった、これまでの常識を変える大きなきっかけになった。
だから、店舗が移動して人々の生活の中に入っていく。実店舗、ECに次ぐ第3の選択肢として移動店舗を機能させることで、新たな顧客接点を生み出していくことを目指すという。
実際、移動商業店舗で実現できる買い物体験は、これまでとは大きく異なる。実証実験や調査で見えてきたのは、立地や曜日によってピークタイムとアイドルタイムが移り変わっていくことだ。例えば、平日の朝の時間帯なら、住宅地にはパン屋や靴磨きのニーズがあり、オフィスビルならコーヒースタンドのニーズがある。休日の住宅地ではクリーニングやマッサージなどの需要を想定できる。店舗の業態によって変わるピークタイムに合わせて出店場所を移動させれば、効率的な販売が可能だ。
客にとっては、買い物場所が「いつも同じ光景」ではなくなる。曜日や時間帯に合わせて提案される商品やサービスに触れることができる。また、それに加えて、商品やサービスと“思いがけない出会い”をする機会を得られる。後藤氏は「トライアルでは『このお店と出会ってうれしい』という潜在的なニーズを捉えることもできた。時間と場所が柔軟だからこその感動がある」と話す。
実験では、飲食や物販だけでなく、包丁研ぎや整体といったサービスの店舗の集客も好調だった。生活に密着したサービスでも、なかなか自宅の近くに専門店がないケースは多い。そんなサービスを提供する店が思いがけず来てくれたら、消費者の買い物に対する満足度は高まるだろう。
そのような特徴から、移動商業店舗では、家族で買い物に来たり、近所の口コミで来店したりする姿も目立った。郊外の移動スーパーが高齢者などの交流の場となっている事例は他にも多いが、都心のマンションでも移動店舗がコミュニティー形成につながる可能性があることが分かったという。
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