バスケットボールが「スポーツくじ」の対象に 「スポーツベッティング」はスポーツ界の救世主となるか:日本にスポーツベッティングは根付くか(2/3 ページ)
2020年末の法改正で、バスケが「toto」の対象に追加予定となった。コロナ禍で資金繰りに苦しむプロスポーツも多い中、スポーツベッティングは新たな稼ぎ頭となるのか。
例えばtotoは、先述したようにあくまで「例外」という位置付けであり、その例外的な取り扱いを正当化するため、運営には法的に高度の公益性が求められている。従って、民間の事業者が参入できないため、ベッティング事業者同士の顧客獲得競争にもさらされておらず、海外ブックメーカー事業者がおおむね90%以上に設定している還元率は50%程度に設定されている。さらに、パリミュチュエル方式(必ず胴元である運営側が利益を得る仕組み)を採用しているなど、コンシューマーにとってあらゆる点で、不利であると指摘されている。
このようなtotoの現在の構造からして、仮に対象がサッカー以外の競技に拡大されていったとしても、日本におけるスポーツベッティング市場の成長には、諸外国と比べて限界があるといわざるを得ない。
懸念の「八百長」 対策が難しいワケ
また、日本でスポーツベッティングを根付かせるためには、八百長や不正の防止も重要だ。現実問題として、これまでも、スポーツに関連して違法賭博や八百長に関する問題が多数発生してきた。
当然のことだが、八百長はスポーツの高潔性を害するものであり、許されない。競技スポーツは「筋書きのないドラマ」といわれるように、やってみるまで結果が分からないからこそ、観る者を熱狂・感動させるのであり、そこに大きな価値がある。この勝敗の偶然性に故意のプレーや不正が絡めば、その価値は大きく毀損(きそん)されてしまう。
現在、日本の八百長対策は万全とは言い難い。そもそも、賭博は原則違法という建前をとっているため、賭博があることを前提として本格的な八百長対策を行っている競技は多くないのだ。
しかし、海外のブックメーカー事業者が、日本のスポーツも対象にベッティングを行っている現状があり、Jリーグやプロ野球、相撲などさまざまなスポーツが日々ベッティングの対象となっているのも事実だ。
そして、現在はSNSなどの発展により、メッセージの送信や通貨の交換なども、瞬時かつ簡易に可能だ。現役アスリートに対して、SNSなどを通じて海外から「相手に賭けているから、お前は負けろ」といったようなメッセージが飛んでくるなどの事例も確認されている。送金の方法も、直接のやりとりでは足がつきやすいことから、投げ銭の形で送ることも考えられる。
また、近時は、選手の個々のプレ―や動作など、勝敗以外の部分までも賭けの対象となっていて、その範囲も日々拡大・細分化されている。これに伴い、八百長の類型も日々巧妙化・複雑化している。このように高度化する八百長等への不正対策が、スポーツベッティングを普及させるためのリスク管理には必要不可欠となる。
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