ブラックジョークでは済まない「ハロワ職員1万人雇い止め」問題 非正規雇用の「使い捨て」を解決するために求められるもの:不本意型の非正規雇用を減らすには(5/5 ページ)
ハローワーク職員の「雇い止め可能性」が一部新聞で報道され、話題になった。一部では非正規雇用を単なる「調整弁」や「使い捨て」としてしまっているケースもあるが、今後はそうした不本意型の非正規雇用を減らしていく必要がある。では、具体的に、どうすればいいのか。
非正規の「調整弁」「使い捨て」問題を和らげるために必要なこと
最も重要なのは、給与の改善です。期間限定で雇用される人は、契約満了とともに仕事を失うリスクを負っています。その分、もし同じ仕事をしているのであれば、無期限で雇用される人よりも時間当たりの給与を高くするという考え方があっても良いはずです。
これまでの経緯を見ると、期間限定の雇用は企業の人件費削減策として用いられてきた側面が強いと思います。確かに職務ニーズも期間限定であれば、雇用期間も期間限定にすることで人件費の無駄をなくすというのは合理的で納得感もあります。ただ、働き手が不本意型(本来は長期安定雇用希望)の場合、期間限定による仕事喪失リスクを負うことを考慮して、その分、時間当たりの給与は高くてしかるべきだと考えます。それでも期間限定で雇用は終了するため、企業としては無期限で雇用するより人件費を抑えることができます。
官公庁の場合、期間限定のプロジェクトを民間に業務委託すると、最も低い金額で応札した業者が受託することになります。すると、その業務を担当する働き手の給与は、落札金額で収まる範囲の低い水準に抑えられてしまうことになります。そのように、期間限定で働く人の給与を低くするインセンティブが働いてしまうシステムについても見直しが必要です。
さらに、職務ニーズは無期限で雇用は期間限定というズレが生じている場合、不本意に期間限定で雇用される働き手の給与水準が無期雇用の働き手と比較して同等以下であれば、ズレを調整する負担やリスクを働き手だけに負わせることになり、フェアではありません。非正規雇用が調整弁や使い捨てと非難されるゆえんです。
時代の変化スピードが加速する中、今の日本の労働システムにおいて無期限の雇用を増やすのは容易ではありません。期間限定の雇用で働く人の給与水準を上げることは、雇用契約と職務ニーズの期間のズレが引き起こす、不本意型非正規雇用者のジレンマを和らげるために必要な施策だと考えます。
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