もはや時代遅れ? 今こそ日本企業は“コミュ力”信仰から脱却すべきワケ:リスクも多い、“コミュ力”採用(1/4 ページ)
経団連が発表した教育界への提言が、波紋を呼んだ。経済界が教育界へ提言をする一方で、経済界も変わる必要が求められているといえる。その一丁目一番地は、“コミュ力”信仰かもしれない。
コミュニケーション能力に自信がある人がうらやましい、と思ったことがある人は少なくないと思います。実際に、JTBコミュニケーションデザインが2018年に行った調査では、約58%の人が「コミュニケーションが苦手」と回答しています。
しかしながら、前回記事『上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ』に書いたように、日本企業が新卒学生を採用する際に最も重視しているのはコミュニケーション能力です。
ただ、一概にコミュニケーション能力といっても、意味する内容は企業によって異なるかもしれません。また、コミュニケーションに求められる機能にもさまざまなものがあり、理解力・傾聴力・伝達力・表現力・共感力・忖度力・質問力――など、細かく要素分けすることもできます。
企業によっては、それらの要素ごとに適性検査ツールなどを用いて判定しているケースもあると思いますが、一般的にコミュニケーション能力は、人対人の面接で見極めることが多いのが実情です。そのため、少なからず会話のやりとりを通して受ける“印象”に影響されることになります。
“印象”という要素を軸にすると、採用時に企業が評価するコミュニケーション能力は大きく3段階に分類できます。
(1)「卒なく」意思疎通ができる
職場で業務を指示するとき、その内容をきちんと聞き取って理解できなければ、期待通りの成果を出すことはできません。また、分からないことがあれば質問したり、自分なりの意見を述べたりするといったやりとりができることも大切です。
出すべき成果に向けて必要な情報を共有するためには、職場内で卒なく意思疎通できることが基本となります。外国人を採用する際に一定以上の語学力が求められるのも、業務を遂行するために最低限の意思疎通が必要だからだといえます。
関連記事
- 上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ
経団連が発表した教育界への提言は“喝”ともいえる内容で、至極まっとうなことをまとめている。その一方で、何となく違和感を覚える理由はどこにあるのか。 - 日本中に“隠れ無惨”上司がいる! 鬼舞辻無惨のパワハラを笑えないワケ
人気漫画『鬼滅の刃』で、鬼たちの「パワハラ会議」が話題となった。ネタとして消費されているが、日本企業も笑っていられないのではないだろうか。 - 「週休3日」「副業容認」は各社各様 “柔軟な働き方”を手放しで喜べないワケ
新型コロナを受けて大手企業でも「週休3日制」や「副業容認」が進む。これまでもいくつかの企業はこうした働き方を柔軟にする制度を導入してきたが、個々の会社によって運用方式は違う。それぞれの違いを見逃さないために抑えておくべき、「3つの変化」とは。 - オリエンタルランド「ダンサー配置転換」の衝撃――非正規社員を“犠牲者”にしないために、いま求められるものとは?
一部報道によると、オリエンタルランドがダンサーなどの配置転換を行う。不景気時には真っ先に「調整弁」となる非正規雇用だが、“犠牲者”にしないために必要なものとは? - 社員に「何か手伝うことはないですか?」と言わせる会社が時代に合わなくなっていくと思える、これだけの理由
若手社員にありがちな、定時後の「何かやることありますか?」という伺い立て。日本企業は個々の役割分担があいまいだからこそ、こうした「職場第一主義」的ななりふりが求められてきた。しかし、時代の変化によって、こうした職場第一主義から抜け出す必要が生じてきている。 - 増えるストレス、見えた希望――コロナショックを機に、働き手の“反乱”が始まる?
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、働き手の意識が変わった。テレワークも浸透し、仕事よりも生活を重視する層が増えている。一方、企業の腰は重く、働き手との「意識の差」がどんどん開くかもしれない。このままいけば、抑圧されていた働き手の反乱が始まる可能性がある。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - なぜ、失業者ではなく休業者が新型コロナで激増したのか 2つの理由
新型コロナで休業者が激増している。リーマンショック時と比較すると、その差は顕著だ。なぜ、失業者でなく休業者が激増したのか? 背景に2つの理由があると著者は解説する。 - 「ブランク」や「ドロップアウト」は無意味ではない いま見直すべき、「採用の常識」とは?
就職や転職の際に、多くの企業が重視するのが、その人材が社会や企業の求める能力や規範に合致しているかどうかという点だ。そのため、規範から外れていたり、「ブランク」や「ドロップアウト」の経験があったりする人が生きづらさを感じることも少なくない。ビースタイルホールディングスの調査機関「しゅふJOB総研」の所長を務め、「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催する川上敬太郎氏は、こうした社会を「能力適合型社会」とし、一人一人の能力の方へ着目する「能力発見型社会」への移行を提唱する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.