もはや時代遅れ? 今こそ日本企業は“コミュ力”信仰から脱却すべきワケ:リスクも多い、“コミュ力”採用(2/4 ページ)
経団連が発表した教育界への提言が、波紋を呼んだ。経済界が教育界へ提言をする一方で、経済界も変わる必要が求められているといえる。その一丁目一番地は、“コミュ力”信仰かもしれない。
(2)「心地よい」意思疎通ができる
日常会話の中でも感じることですが、話をしていて良い印象を受ける人もいれば、そうでない人もいます。交わされる会話が心地よいものだと、職場の雰囲気も良くなります。逆に、トゲトゲしくて不快な印象を与える会話だと、イヤな緊張感が漂ってしまうものです。
卒なく意思疎通できる人であっても、相手に与える印象が悪ければコミュニケーション能力が高いとは評価されません。一方、採用面接などで心地よい意思疎通ができる人には、採用後も職場の雰囲気を良くしてくれるだろうと期待が持てます。
(3)「人を引きつける」意思疎通ができる
コミュニケーションが上手だなと感じる人の中には、単に心地よいというレベルを通り越し、会話や表情、身振り手振りなどを通じて相手引きつけ、魅了してしまうような意思疎通ができる人もいます。営業職や広報担当者のような、外部接点の多いポジションはもちろん、人と接するあらゆる仕事シーンで武器となりうる能力だといえます。
面接官が引きつけられるほどであれば、採用後、その人は同じように職場や客先で接する人たちを魅了するのではないかという期待が高まります。面接官は、「ぜひこの人と一緒に仕事がしたい」と思うのではないでしょうか。
“印象”という要素を軸にすると、コミュニケーション能力は(1)から(3)へと、順に高く評価されることになります。そして、できれば(3)、少なくとも(2)の人を採用したい、ということになりそうです。
ここで気を付けなければならないのは、コミュニケーション能力の判断はあくまでその面接官個人の印象にすぎない点です。別の人が面接すると、違う印象を受ける可能性もあります。そこで多くの場合、一個人の印象だけで判定してしまわないよう複数人で面接する方法をとります。
例えば、3人の面接官が全員“心地よい意思疎通ができる”人だと評価したら、その応募者は他の人との間でも“心地よい意思疎通ができる”可能性が高いと判断できます。もし3人とも“人を引きつける意思疎通ができる”と感じるようであれば、コミュニケーション能力“抜群”と評価されることでしょう。
“コミュ力”重視の採用はメンバーシップ型と相性がいい?
採用時にコミュニケーション能力の高さを重視することは、メンバーシップ型といわれる日本企業の特性と相性が良く、合理的だといえます。
関連記事
- 上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ
経団連が発表した教育界への提言は“喝”ともいえる内容で、至極まっとうなことをまとめている。その一方で、何となく違和感を覚える理由はどこにあるのか。 - 日本中に“隠れ無惨”上司がいる! 鬼舞辻無惨のパワハラを笑えないワケ
人気漫画『鬼滅の刃』で、鬼たちの「パワハラ会議」が話題となった。ネタとして消費されているが、日本企業も笑っていられないのではないだろうか。 - 「週休3日」「副業容認」は各社各様 “柔軟な働き方”を手放しで喜べないワケ
新型コロナを受けて大手企業でも「週休3日制」や「副業容認」が進む。これまでもいくつかの企業はこうした働き方を柔軟にする制度を導入してきたが、個々の会社によって運用方式は違う。それぞれの違いを見逃さないために抑えておくべき、「3つの変化」とは。 - オリエンタルランド「ダンサー配置転換」の衝撃――非正規社員を“犠牲者”にしないために、いま求められるものとは?
一部報道によると、オリエンタルランドがダンサーなどの配置転換を行う。不景気時には真っ先に「調整弁」となる非正規雇用だが、“犠牲者”にしないために必要なものとは? - 社員に「何か手伝うことはないですか?」と言わせる会社が時代に合わなくなっていくと思える、これだけの理由
若手社員にありがちな、定時後の「何かやることありますか?」という伺い立て。日本企業は個々の役割分担があいまいだからこそ、こうした「職場第一主義」的ななりふりが求められてきた。しかし、時代の変化によって、こうした職場第一主義から抜け出す必要が生じてきている。 - 増えるストレス、見えた希望――コロナショックを機に、働き手の“反乱”が始まる?
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、働き手の意識が変わった。テレワークも浸透し、仕事よりも生活を重視する層が増えている。一方、企業の腰は重く、働き手との「意識の差」がどんどん開くかもしれない。このままいけば、抑圧されていた働き手の反乱が始まる可能性がある。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - なぜ、失業者ではなく休業者が新型コロナで激増したのか 2つの理由
新型コロナで休業者が激増している。リーマンショック時と比較すると、その差は顕著だ。なぜ、失業者でなく休業者が激増したのか? 背景に2つの理由があると著者は解説する。 - 「ブランク」や「ドロップアウト」は無意味ではない いま見直すべき、「採用の常識」とは?
就職や転職の際に、多くの企業が重視するのが、その人材が社会や企業の求める能力や規範に合致しているかどうかという点だ。そのため、規範から外れていたり、「ブランク」や「ドロップアウト」の経験があったりする人が生きづらさを感じることも少なくない。ビースタイルホールディングスの調査機関「しゅふJOB総研」の所長を務め、「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催する川上敬太郎氏は、こうした社会を「能力適合型社会」とし、一人一人の能力の方へ着目する「能力発見型社会」への移行を提唱する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.