焼き肉業態で「非正規差別」? 批判記事を巡り、ワタミが抗議した「論拠」とは:「効率化で非正規切り」は本当か(1/4 ページ)
コロナ禍で焼き肉業態へ業態転換を進めるワタミだが、近頃「非正規差別」をしているとの批判記事が公開された。これを受けてワタミ側は抗議文書を発表したが、その根拠は? 取材で見えてきた事実とは。
2020年の春から続くコロナ禍の影響により、この年末年始は多くの会社や個人が忘年会、新年会を控えたことで飲食業界は書き入れ時の売上が消失し、また年始早々11都府県で2度目の緊急事態宣言が発出された影響もあり、当該地域の飲食店の経営には大きな打撃となっている。
東京商工リサーチによると、20年における負債1000万円以上の飲食業倒産件数は842件と、過去最多であった11年の800件を上回るワースト記録となったという。
特に、感染拡大によって休業や時短営業を余儀なくされた「酒場,ビヤホール(居酒屋)」業態の倒産件数は急増しており、コロナ禍以前から人手不足と人件費高騰の影響も受けていたことも重なって、極めて厳しい収益環境にあるといえる。実際、居酒屋大手のモンテローザは、2度目の緊急事態宣言発出を受けて、東京都内で運営する337店舗のうち、61店舗の閉店を発表している。同社はアルバイト含め約2万人が働いており、その雇用維持が困難だとし、固定費を圧縮するための措置だという。
そんな中、同じく業界大手のワタミは、売上が落ち込む居酒屋から、業績回復基調にある焼肉店への業態転換を発表。同社の主力ブランドである「和民」の全店を順次「焼肉の和民」に切り替え、既存ブランドの転換とフランチャイズ展開を合わせ、今後5年で400店舗の出店を目指すという。同業態では食べ放題形式を中心とし、配膳ロボットを導入するなど店舗運営の合理化を推進することで雇用を守ろうとしており、その取り組み内容はNHK「クローズアップ現代+」でも採り上げられ、報道されている。
しかし、当該報道から数日後、ネット上でワタミに対する批判記事が掲載された。
関連記事
- 【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する
「ワタミの宅食」で起こった残業代未払い問題。それだけでなく資料改ざんやパワハラなど、「やっぱりワタミはまだブラックだったのか?」と思わせるような実情が告発された。本当にワタミはブラック企業へ回帰したのか。内部取材を敢行すると、思わぬ事情が見えてきた。 - ワタミの「ホワイト企業化宣言」は本当なのか? データから徹底検証する
創業者である渡邉美樹氏が10月1日、ワタミに復帰。復帰会見では離職率の低下など、「ホワイト企業化」が宣言された。「ブラック企業」と批判され続けてきたワタミだが、本当に環境はよくなったのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が3回にわたり、ワタミの過去を振り返るとともに現状を検証する。 - 社員に「何か手伝うことはないですか?」と言わせる会社が時代に合わなくなっていくと思える、これだけの理由
若手社員にありがちな、定時後の「何かやることありますか?」という伺い立て。日本企業は個々の役割分担があいまいだからこそ、こうした「職場第一主義」的ななりふりが求められてきた。しかし、時代の変化によって、こうした職場第一主義から抜け出す必要が生じてきている。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - 話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。こうしたシステムが出てくれば、テレワークが骨抜きになってしまい、生産性を高める「成果主義」が定着しない、と新田龍氏は指摘する。 - 「脱ブラック」進むワタミ、コロナで大打撃ながらも従業員に“太っ腹”対応
新型コロナの影響が深刻だった居酒屋業界。そんな中、「脱ブラック」が進むワタミでは従業員に手厚い対応を見せた。黒字予想から一転、20年3月期は60億円超の赤字となりながらも矢継ぎ早に講じた対応は、どういったものだったのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.