コロナ禍の“映画鑑賞”どう変わる? 激動の「ストリーミング戦争」 Netflixは会員数500万人にほぼ倍増(3/4 ページ)
ここ1年で人々の消費の形が変化し、特に映画の受容形態は大きく変わった。新作の公開の場としてストリーミングサービスが活用されている。
「無料体験」は終わっていくのか?
さて、多くのストリーミングサービスでは会員数を増やすため、「初回oo日無料!」と無料体験訴求を行っている。約2週間〜1カ月のサービス期間でその便利さに触れさせ、暮らしの中のインフラとして取り入れてもらうことで、有料会員へとつなげるのが王道パターンだ。
これに関してはAmazonが圧勝といっていいだろう。映像・音楽の見放題・聴き放題に加え、通販のお急ぎ便はいつでも送料無料。この破格さで生活に入りこみ、1カ月の無料期間が終わっても、日本のプライム会員は他国と比べて驚くほどリーズナブルな月額500円。圧倒的な資本力をもつAmazonだからこそ実現可能なサービスだ。
そんななか、U-NEXTは日本マクドナルドと提携し、20年7月から9月末と実に約3カ月の無料体験期間を付与するキャンペーンを実施した。「おうち時間充実」と題したこのキャンペーンではさらに、アプリ内で新作映像作品のみならず電子書籍も購入できるポイントを与えるなど、エンターテインメントの総合アプリとしての地盤を固めようとする姿勢が伺える。
過去3年間で2.5倍になった会員数は209万人(20年8月)と、開始から14年目の老舗サービスとしては少々寂しいものがあるが、常時のオンデマンド・コンテンツのポイント40%還元(電子書籍含む)や雑誌の読み放題に加え、1950年代のアニメ映画、アイドルのライブ映像、唯一のアダルト作品配信を備えるなど独自色の強い特典を備えているのも事実。使い道によっては、他プラットフォームより活用できる人も多いだろう。
対してNetflixは、世界的に「無料体験期間を打ち切る」という方針にかじを切った。同社は今までも「あまり利用していないユーザーに対して退会を勧告する」など、これまでのビジネスモデルとしては考えつかないような手法をとってきた。これは無料でユーザーを獲得するというモデルからの「一抜け」宣言であり、先駆者としての自信の現れなのか。または他サービスについても、このような手法が主流となっていくのだろうか。
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