コロナ禍の“映画鑑賞”どう変わる? 激動の「ストリーミング戦争」 Netflixは会員数500万人にほぼ倍増(4/4 ページ)
ここ1年で人々の消費の形が変化し、特に映画の受容形態は大きく変わった。新作の公開の場としてストリーミングサービスが活用されている。
HBO Max、Paramount Plus 「戦争」はまだ終わらないものの……
現状既に飽和状態といってもいいこれらのサービスだが、これだけではまだ終わらない。間もなく1億人に到達するDisney+の成功を見た各社が続々参入を発表。まず「バットマン」「ゲーム・オブ・スローンズ」を携えるHBO Max、「ゴッドファーザー」の舞台裏ドラマ「ジ・オファー」を発表したパラマウント・ピクチャーズによるParamount Plus、「DPlay」に代わるディスカバリーチャンネルによる新サービスDiscovery+などである。これらの巨大資本が世界展開するサービスに対し、国内勢力はどう立ち向かうべきか……、と言いたいところだが、一つ指摘しておきたいことがある。ここまで触れてこなかった、docomoが展開しているサービスであるdtvだ。
その会員数は、5年前の2016年に500万人を突破している。これは冒頭にあげた、Netflixの現在での会員数とほぼ同数である。こちらはほぼワンコインという価格の安さが魅力であり、国内新作ドラマ・アニメや、人気作品のスピンオフと言ったオリジナル作品も豊富に備えている。それほどディープに海外新作映画を追いかけているわけではなく、「テレビの代わり」としてのコンテンツ消費を助け、それを拡大するものとして間違いなく成功している部類に入るだろう。そしてこのような手法は、これから続々と入ってくる「黒船」たちには非常に実現が難しいところになる。彼らが求めているのはライトな楽しみであり、どのようなビッグバジェット映画や、名の知れた大監督を連れてきてもこの層の心をつかむことはできない。
それを象徴するのがHulu(HJホールディングス)の伸長だ。日本では日本テレビ傘下となっており、近年ではNijiUのデビューを追った独自番組「Nizi Project」の成功が話題になったが、そのランキングはビッチリと国内ドラマ・アニメにバラエティで埋め尽くされている。「すばらしい新世界」や「ハンドメイズ・テイル」など、日本初上陸の海外ドラマの配信にも力を入れているだけにこのランキングは個人的にかなり残念ではあるものの、20年に初の黒字化を果たすなど、コロナ禍のなか大きく成長を果たしたプラットフォームである。
そのような中でこれからのプラットフォーム戦争は、どのような形になるだろうか。個人的には映画館がプラットフォームに変わっただけで、あまり変わらないのではないか、と思う。
大半の利用者はそもそも登録しない、もしくは一つのサービスを母艦として、そこから動かない。新作映画をとことん楽しみたい人も、注目の新作が発表されたら1カ月だけ契約。しばらく使用して、特に更新する気がなければ停止。また他のサービスで配信された新作のために1カ月だけ……と、まるでオンデマンドサービスのようにサブスクリプションを利用するかもしれない。仮にそうなった場合はそのような中でまたサービスが淘汰され、また良いように変わっていくだろう。
ユーザーにとってもこれ以上のサービス乱立はそろそろ酷だろう。そして新型コロナに対するワクチン実用化に伴う「ニューノーマルの終わり」も近い。21年はエンターテインメントの在り方にとって、また一つの過渡期になるだろう。
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