1000円に手を出す「ダイソー」と100円にこだわる「セリア」 コロナ禍でも好調な業界に変化:長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)
コロナ禍でも100円ショップ業界が好調だ。「2強」のダイソーとセリアでは戦略が大きく異なる。キャンドゥとワッツの独自戦略にも迫る。
かたくなに100円均一を貫くセリア
大生産拠点である中国の人件費が高くなったことなどが影響し、100円ショップは“100円均一”を維持するのがコスト的に苦しくなった。そのため、150円、200円、300円、500円、1000円と、高額な商品を売るようになった。ビニール傘はかつて100円でそこそこしっかりしたものが買えたが、今では300円くらいしてしまうことも多い。
その傾向が最も進んでいるのがダイソーだ。例えば、容量1万mAhのモバイルバッテリーが1000円で販売されている。これは、一般的な家電量販店と比べて4分の1ほどの価格だ。このバッテリーは、ダイソーでは最高額の商品だが、“超安価”でもある。こうした“激安”を開発する力を持っているのがダイソーの強みだ。
キャンドゥやワッツでも100円以上の高額商品が増えてきている。しかし、「そうは言っても、消費者は価格に敏感。大半が100円均一の商品だ」(ワッツ・広報)といったように、100円ショップ各社は消費者の節約志向に応えていく覚悟である。
一方、300円ショップの「ミカヅキモモコ」を近畿地方を中心に50店展開していた三日月百子が2月8日、自己破産の準備に入ったと帝国データバンクが報じた。100円ショップが、300円の領域にまで侵食してきたので、競争が激しくなったのだ。
かたくなに100円均一を貫いているのはセリアだ。セリアの商品数は約2万点だ。ダイソーが約7万点なので、3割以下である。商品点数が絞り込まれているので、製造コストが安く、消費者にも安価で提供できる。そのうえ、セリアの営業利益率は10%前後と高く、キャンドゥやワッツの1%台を大きく引き離している。
100円から1000円まで多彩な価格で攻めるダイソー、100円均一をあくまで守るセリア。デザイン性とこだわりで2強と差別化したいキャンドゥ。2強の隙間を突く立地戦略のワッツ。
100円ショップ各社は、どの店もよく似ている“均一性”から脱却し、独自のブランドアイデンティティーで勝負するように進化した。その魅力が巣ごもり消費によって、生活者に再発見され、好業績につながっている。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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