ヤフーとLINE 経営統合で何を統合? すみ分け?(2/2 ページ)
3月1日に経営統合を完了したZホールディングスとLINE。会見では、Co-CEO(共同CEO)となる川邊健太郎氏と出澤剛氏が統合後の戦略を話した。
統合したコード決済。ほかのフィンテックは?
中長期的に期待しているのが、決済領域を含むフィンテックだ。今回、LINE PayをPayPayに統合し、またポイントプログラムも統合することで、強化を図る(記事参照)。
川邊氏は「金融屋がやるネット事業ではない。ネット屋がやる金融事業をやりたい」と意気込む。金融サービスを自社ですべて提供するのではなく、さまざまな金融事業者と連携するマルチパートナー制を強調。「どの金融事業者でもPayPayの上で、金融事業を展開できる」(川邊氏)と話した。
しかし、決済以外の金融サービスは、PayPayブランドとLINEの競合状態は解消していない。Zホールディングスは、PayPay銀行、PayPay証券など、各金融事業者にPayPayの名を冠してブランド強化を予定している。LINEは、好調のLINE証券だけでなく、LINE銀行を22年年度中の開業を目指して準備しており、2つのブランドが併存する構図のままだ。
コード決済以外の金融事業の方向性としては、すみ分けを目指す。「PayPay証券とLINE証券は、ユーザー属性や商品が違う。すみ分けができる」と出澤氏。川邊氏も「ユーザーへの総リーチが重要。PayPay銀行だけにすると、LINEユーザーが使わないということもある」と、統合には否定的だ。
同様に、ヤフーニュースやLINEニュースなども、「統合は予定していない。ユーザー属性が極めて補完的」(川邊氏)とした。
海外展開ではLINEを持つが
会見では、「ローカル」「国内の」という言葉がたびたび登場し、両社ともに国内に基盤を持つ企業であることの印象が強い。GAFAや中国のBATへの対抗という話も多かったが、海外でGAFAに勝っていくというより、国内市場をGAFAから守るという文脈だ。
背景にはヤフーの生い立ちも関係しているだろう。もともと米ヤフーとソフトバンクの合弁会社として生まれた同社は、ライセンス上、ヤフーブランドの利用が日本国内に限定されている。その意味で「ヤフーは海外展開はない」(川邊氏)わけだ。
LINEは「日本のネット企業でも数少ない、海外進出に成功している会社」(川邊氏)ではある。しかし、LINEが上場後に目指した海外での拡大は、各所でフェイスブックなどの競合に破れ、上場直後の17年当時から20年末までで、グローバルでの利用者は3%しか増えていない。
国内において、「GAFAより優れているのは、グループの守備範囲の広さ。親会社まで入れると携帯事業まで幅広くやっている。総合力を生かしていきたい」と話す川邊氏。国内に強いネット企業2社は、統合によってスーパードメスティック企業となるのだろうか。
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