PayPayマネー? ボーナス、さらにライト? なぜ電子マネーの残高は複雑なのか(1/3 ページ)
そもそもなぜ似たような残高やポイントに、複数の種類があって期限などが異なるのだろうか。また、どうして手間のかかる本人確認が必要な場合と、必要でない場合があるのだろうか。
ヤフーは2月1日から、ヤフーの各種サービスでの特典として付与されるポイントを、従来の「PayPayボーナスライト」から、有効期限のない「PayPayボーナス」に変更すると発表した。
「有効期限を気にせず買い物が可能になる」と同社はコメントしているが、そもそもなぜ似たような残高やポイントに、複数の種類があって有効期限などが異なるのだろうか。また、どうして手間のかかる本人確認が必要な場合と、必要でない場合があるのだろうか。代表的なサービスとしてPayPayを例に、どんな仕組みなのかを見ていこう。
電子マネーを取り巻く法律
まずPayPayが用意している4種類の残高について概要を確認しよう。
PayPayマネーは残高の中でも最も自由度の高いものだ。支払いを行う場合も、使用の優先順位は最後になる。この残高は、資金決済法に基づいてPayPayが取得した資金移動業の登録のもと、ユーザーから預かったお金にあたる。
日本では、ユーザーのお金を送金するいわゆる「為替取引」は銀行でないと行えなかった。しかし2010年に施行された資金決済法によって、別のユーザーへお金を送金できる資金移動業者が生まれることになる。これによって、銀行口座から現金をチャージしたり、チャージしたお金を口座に現金として出金できるようになった。
ただし銀行とは違い、いくつかの制約もある。扱える取引や送金は100万円まで。さらに基本的に預かった金額の100%以上を法務局に供託して、資産を保全しなくてはならない。そして、マネーロンダリングを防ぐため犯罪収益移転防止法の規制を受けるため、本人確認を行わなければならない。
Fintech協会理事の落合孝文弁護士(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)は、「本人確認自体が目的ではなく、アンチマネーロンダリングやテロ資金対策には、誰がこの行動をしているのか分からないと対応できないので、資金移動業者は本人確認を行っている」と話す。
さらに銀行口座への出金が可能なため、クレジットカードからのチャージも行えない。これは、クレジットカードのショッピング枠を現金化できてしまうからだ。消費者への被害が出たことなどを背景に、クレジットカード各社は自主規制的に対策、規約で禁止としている。
なお、こうした規制は海外ではあまりないようだ。英国発のチャレンジャーバンクで、国内でも資金移動業の登録のもとにサービスを行うレボリュートによると「日本特有」だという。
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