「鬼滅の刃」は世界で通用するのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
『鬼滅の刃』が大ヒットしている。その人気は国境を越えて、アジアだけでなく、欧米でも注目を集めるかもしれない。それにしても、なぜ外国人にこの映画が受けているのか。その秘密を探ったところ……。
海外でウケている理由
外国人から見てデーモン・スレイヤーの何が刺さるのか。米Webメディアのスリリストは、「ストーリーとテーマ、キャラクターのデザイン、アニメーション。デーモン・スレイヤーのほぼすべてがこれまで成功してきた素晴らしいアニメシリーズと同じように機能している」と分析する。さらに「かっこいい戦いのシーンだけでは映画を大成功させることはできない。ストーリーこそがこの作品を有名にし、愛されるものにしている」とも書く。
ところで、そもそもなぜ日本のアニメが、世界に受け入れられるのだろうか。これまでも、もちろんいろいろと議論されてきた疑問ではあるが、今もインターネット上にはいろいろと分析している人たちがいる。例えば、こんな見解もある(参照リンク)。
「アニメはオリジナルだ。かなり魅力的な日本の近代的なアートの形で、ビジュアルに強烈な魅力がある。コンピュータやビデオゲームの世界で育ってきた多くの若者は特に、アニメの独特の美しさを受け入れやすい」
その日本アニメ独特のタッチが、ゲームで育った人たちを引きつけるのだという。
アニメファンのブログなどをいろいろと読んでみると、アニメが米国など他のアニメーションと違う理由の一つに、ゲーム業界とのつながりがあると分析している。アニメのキャラクターがゲームになっているようなケースもあり、ゲームからアニメに入っていく人たちも少なくないという。
また日本アニメのキャラクターの「目」に引きつけるものがあると主張する人もいる。確かに、日本アニメは、キラキラとした目の描写に力が入っている。米国のアニメは、どちらかと言うとシンプルなものが多い。
学術的にアニメを研究している人もいる。マサチューセッツ州にある有名大学のタフツ大学のスーザン・J・ネーピア教授が自著『Anime from Akira to Princess Mononoke: Experiencing Contemporary Japanese Animatio(アキラからもののけ姫まで 近代日本アニメとの出会い)』という本の中で、日本アニメをこう分析している。いわく、アニメのメッセージの伝え方は、「深い文化的な伝統の上に積み上げられた知能の発達を促し、芸術形式を刺激する」という。
またネーピアは、「アニメは、商業的・文化的な勢力としてグローバルなものである」とも書き、欧米社会で育った人たちが日本のアニメに引かれる理由を「支配的な米国のポップカルチャーとの断固たる違いがある」からだと分析している。
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