職場近くの飲食店を“社食化” ジャパネットHD、出社・対面重視のコロナ共存策:全国初(1/2 ページ)
ジャパネットホールディングスは、出社を基本としたコロナ共存策を打ち出している。「食」を軸とした社員の健康管理に注力。特に拠点周辺の飲食店を“社食化”するアプリの導入は、全国で初めての試みだという。
テレビショッピングでおなじみのジャパネット。その持株会社であるジャパネットホールディングス(HD)の新型コロナウイルス感染拡大における、企業としての取り組みを取材した。同社の取り組みの特徴は、出社を基本としたコロナ共存策と「食」を軸とした社員の健康管理にある。特に、拠点周辺の飲食店を“社食化”するアプリの導入は、全国で初めての試みだという。広報室の植木佑依氏に話を聞いた。
出社が基本のコロナ共存策
ジャパネットというと通販会社のイメージが先行するが、傘下に物流、旅行代理店、広告代理店、番組制作、サッカー・バスケットボールクラブを抱える多様な事業体でもある。そのため、単に「貴社のテレワーク率は、何割ですか」という質問が全く意味をなさない企業でもある。
現に、物流やコンタクトセンターといったエッセンシャルな拠点でのテレワーク率は限りなく低い反面、二百数十名が勤務する東京・麻布のバックオフィス系業務が中心のジャパネットHDでは「緊急事態宣言時のテレワーク率は8〜9割」と高い。
麻布オフィスを含めジャパネットでは、昨年4〜5月の1回目の緊急事態宣言以前は、基本的にテレワークを実施していなかった。「会社の考え方として、リアルなコミュニケーションを重視している」ことが最大の理由だ。そのため、緊急事態宣言解除後の昨年6月からは、感染対策を実施した上で、通常の出社体制に戻したという。また、2021年1〜3月の2回目の緊急事態宣言時も5割程度の社員がテレワークに入ったが「解除されたら出社に戻す」そうだ。
傘下のグループ各社のテレワーク状況に目を転じると、前述のようにエッセンシャルな職種も多数あるため「在宅勤務に移行するかどうかは、社員の状況を上長と経営層が個々に判断し、その可否を決めた」という。持病を持っていたり、妊娠中であったり、高齢者と同居していたりする社員については、テレワークを許可した。こうした対応からも、グループ内にさまざまな業態を抱え「コロナと共存しつつ、社内の対面コミュニケーションを重視する」という同社の考え方が伺える。
ユニークな取り組みとしては、昨年9月から「徒歩勤務手当」を支給したことだ。職場から2キロ以内の徒歩圏内に転居した場合、手当が支給される(金額は非公開)。また、昨年末までに転居した場合は、引っ越しの費用を補助した。狙いは、公共交通機関を利用する際のリスクを避けるためだ。
紙の社内報を廃止、テレワーク下の円滑なコミュニケーション
前述のように対面コミュニケーションを重視する同社だが、さすがにテレワーク中は、対面でのコミュニケーションは難しい。そこで、オンラインでのコミュニケーション円滑化の方策を聞いた。
植木氏は「社長や役員が毎日、YouTubeで社員に向けたメッセージを配信した」という。いうなれば、オンライン朝礼のようなものであろう。基本的にはライブ配信で、見られなかった人向けにアーカイブも残しているそうだ。
このようなトップダウン型の縦方向のコミュニケーションに加え、社員同士のミュニケーションについては、オンライン飲み会で対応したという。趣味や出身地など、共通のバックグラウンドを持つ社員が集まることで「他拠点の面識のない社員ともつながりができた」と植木氏。このような施策が功を奏したのか「テレワーク中でも生産性が下がったという感覚はない」と明かす。
以前から紙の社内報を発行していたそうだが、テレワーク下では配布できず、これを契機にデジタルに移行した。配信の手段として、エンタープライズ向けのSNSアプリ「TUNAG」(ツナグ)を導入している。
TUNAGは、社員しかアクセスできないソーシャルメディア。従来、社内報に掲載していたコンテンツを投稿している。「いいね!やコメントが付けられるので、社員間の情報共有が活性化した」そうだ。コロナ禍が収束しても「SNSでの情報共有が定着したので、紙に戻すつもりはない」という。
職場周辺の飲食店を「社食化」
ジャパネットHDは、全国初の試みとして、事業拠点周辺の一般の飲食店を「社食化」する取り組みを3月16日に始める。スタートアップ企業のGigi(ジジ)が提供する法人向け社食サービスアプリ「びずめし」のプラットフォームを利用して実施する。具体的には、どんな制度なのか。
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